【舞台観賞】「グリムと田中さん」(CAPTAIN CHIMPANZEE) | ヒトデ大石のなんとなくレポート置場

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2011年8月「ヒトデ大石のどんなブログにしようか検討中。」からタイトル変更。
ライブイベント、舞台観劇のレポートを中心に書いていこうというブログ。
以前はmixiが主戦場だったけど、今はこっちが主戦場(笑)

かなり肌寒くなった昨今ですが、いかがお過ごしでしょうか。
私自身は年末に向けて実は色々立て込んでいます。
某年末の有明に向けて原稿執筆だとか(笑)
でも観劇の予定が12月も既に数本あるとか……果たして資金と時間的に大丈夫なんだろうか?(笑)

そんな訳で観劇ラッシュの前哨戦ともいうべき作品を11月某日拝見しました。

今回お伺いしたのは劇団「CAPTAIN CHIMPANZEE」公演「グリムと田中さん」という作品。
「CAPTAIN CHIMPANZEE」(略してキャプチン)さん自体は今回が2回目。
前回は昨年9月、村井みゆき嬢をお目当てに「思いの鳥」という作品を観劇しました。
そしてこの公演をキッカケに知り合ったのが、今回のお目当て、長井柚嬢。

恐らくこの観劇レポートでは何度か出てきますが、彼女の舞台を拝見するのは今年3回目になります。
同郷の出身という縁もあり応援しておりますが、一年の時を経て、再びキャプチンさんの舞台を観る事になったのは何かの縁だと思います。
一年ぶりのキャプチンさん、そして柚嬢の演技を楽しみに会場にお伺いしました。

今回の会場は中野ザ・ポケット。
初めて行く会場なのですが、今年に入り、その近くにある中野・MOMOには今年何度かお伺いしているので道には迷いませんでした。
(ってか、あの辺、舞台が4つほど集中している地域なんですよね)

そんなザ・ポケットですがそれなりに大きめ。
前数列が平坦で、後は段々となっている構造。
ただ段差はそこまできつくないので、意外と中列でも変に高い位置からの観劇にならないからいいかな……と。

そんなこんなで着席。
そしてパンフレットと共に……キャプチン名物「ひまつぶ紙」発見(笑)
この「ひまつぶ紙」の発想は本当に面白い。
この劇団の遊び心がとても良く現れています。
今回も開演までの数十分「ひまつぶ紙」にお世話になりました(笑)

こうしているうちに開演時刻となりあっという間に、開演となりました。

今回は公演も終了しているのでネタバレ有りモードで感想を書きたいと思います。



簡単なあらすじ。

主人公・田中ゆきは枕業界の老舗「永倉まくら」に勤めるOL。
人が良すぎていいように使われてしまう事がしばしばあり、損な性格をしている。

そんなゆきだがここ6日連続して同じ内容の夢を見るようになった。
それは自分が白雪姫になって、七人の小人……っぽい人物たちが現れるというもの。

あまりに同じ夢を見続けるので、同僚たちの勧めで評判の夢占い師に見てもらう事にする。
そこで告げられたのは「愚利夢病」という聞きなれない病気だった。
この「愚利夢病」は伝染病で、いずれ他の人たちもゆきと同じ夢を見るようになり、そして7回目に見たら夢の世界に閉じ込められてしまうという恐ろしい病気だった……。

翌日「愚利夢病」が気になって、一睡も出来なかったゆき。
だが周囲の人々にも「愚利夢病」は確実に伝染していき、ゆきと同じような内容の夢を見る症状が現れ始めた。

そしてある事件をキッカケにゆきと周囲の人々は、ゆきの夢の世界に閉じ込められる事となる……。

果たしてゆきの夢の世界では、一体何が起こるのか。
そしてゆきの「愚利夢病」は治るのか!?



……そんなあらすじ。
ただあらすじに特化すると、こういう書き方になりますが、物語の進行は並行して「永倉まくら」の危急存亡に関わる事態も絡んでくる。

実際、冒頭のシーンの殆どは会社内の描写。
ここで「永倉まくら」の人間関係、現在の状況などが分かる。
この人間関係やそれぞれの人物の置かれている状況が、中盤以降、メインで描かれるゆきの夢の世界においてもかなり重要な伏線になってきます。

また物語全体を通して丁寧にそれぞれの登場人物が描かれているから、分かり憎い点は少なくとても親切です。
前回の「思いの鳥」もそうでしたけど、登場人物の心理とか「思い」を書かせる事に本当に秀でていると思います。
だから殆どの登場人物に対しても、すんなり感情移入出来ます。

作・演出の藤原思氏の力量を感じます。
(ちなみに藤原氏は今回からペンネームを使用するようにしたとの事です)

登場人物がそれなりに多いにも関わらず、殆ど物語が破綻せずに進んでる点は本当に見事でした。
最後のオチも個人的にはかなり好み。
この終わらせ方は素晴らしいと思いました。

舞台の暗転も終盤に一回ある程度で、殆ど集中を切らさず舞台を堪能できました。

唯一、上演時間は2時間10分とやや長め。もう少しコンパクトに出来たかもしれない。
だけど「思い」や感情を丁寧に書く上では、これくらい時間をかけた方がいいのかもしれませんね。
これ以上長いと冗長になってしまうだけなので、このあたりの時間は絶妙かもしれない。

今のところ……2012年自分が観た舞台の中では一、二を争う良作だったと思います。



さて今回気になった出演者の方でも……。

と思いましたが、ちょっと気になったので、昨年9月の「思いの鳥」のパンフと、今回「グリムと田中さん」を比べてみる。
長井柚嬢と、主役の田中を張った池上映子嬢は自分の中では認識があった。

でもこうして誰がどの役やったのか見比べると……「ええ!?」という驚きがある。

真っ先に挙げるなら、山本を演じた木下伸也氏。
まず今回の山本がとても素晴らしい。実は影の主役だったんじゃないかというレベルの大活躍。
一番、キャラクター的に過去のトラウマを抉り出されても、なお屈しないという、人間くささの中に強さを感じる定年間近の枕職人を好演。
今回の中で一番、評価したい。
でも昨年の「思いの鳥」では……高木パパだったか(笑)昨年はエキセントリックなお父さんだったのになぁ(笑)

ギャップで驚いたと言ったら永倉新八郎演じた木村賢氏も負けてない。
「永倉まくら」の御曹司で副社長という役どころでカッコイイ場面が多め。
まぁ途中……おちゃらけたシーンもあったけど……(笑)
まさか「思いの鳥」の車掌とは気付かなかったよ……(笑)

こうして誰がどの役をやったか比べると、つくづく役者って凄いと思う。
もっとも今回でも、メインでは夢占い師の弟子・佐々木を演じた胡七瀬嬢は、実際一人三役と言ってもいい演技をしていたし……。
皆さん、やっぱり凄いと思いますよ。

初見の方で印象に残ったのは、岩倉智美役の永野百合香嬢。
「永倉まくら」のライバル会社「岩倉まくら」のCEOで、永倉の元恋人役という役柄。
最初から最後まで「悪役」というポジションを貫き通しました。
演技の上手さはもちろんなんですが、本当に最後まで敵役なんですよ。
一切、演技に迷いやブレが無かった。存在感が素晴らしかったです。

そして忘れていけない主人公・田中ゆきを演じた池上映子嬢。
この方だけは「思いの鳥」の安藤さんの印象が強く残っていたので、前述のような驚きを感じず拝見する事が出来ました。
演技の上手さもそうなんだけど、田中さんの奥ゆかしいところとか、歯切れがなんとなく悪いようなところとか凄い表現が豊かだった。
昨年の「思いの鳥」とはまた違った、新たな一面を垣間見たような気がしました。

最後にお目当ての長井柚嬢。
彼女が演じたのは七人の小人の一人・ドーピー。
身長の低い彼女には設定からしてハマり役でした。(と言っても、他6人が小人と言えるかどうか、劇中の台詞からしても微妙・笑)
とにかく小さな体で舞台を動き回る姿は、とてもかわいらしくて印象的でした。
また正体が実は田中さんが飼っていた犬のハイジという事もあってか、終始、人なつっこい演技をしていたという印象があります。
終演後、スリーピー役の上村琴嬢と物販案内をするなど本編以外でも大活躍でした。
今年拝見した中では一番、彼女の演技を堪能できたんじゃないかと思いますし、また今年一年の彼女の成長が垣間見える舞台でした。
表情や表現が豊かでした。これからも期待して観ていきたいと思います。



……と、簡単に振り返ってみました。

それにしてもキャプチンさんの舞台は、現代社会の狭間にあるファンタジーという感じがして心が温まります。
本当にいい作品を書く劇団なので、また機会があれば拝見したいと思いました。

そういえばキャプチンさんは、チケット半券があると2回目以降はリピーター価格が適用されるんでした。
今度は2回観に行ってもいいかなぁ……。

そんな事思ったりなんかしました。



・CAPTAIN CHIMPANZEE・公式サイト↓
http://capchim.com/