デュ・バリー夫人 アニメ・べるばら解説講座2 | 歴史考察とっきぃの 振り返れば未来

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こんにちは。
歴史家とっきぃです。

ヨーロッパの平和を、双肩に担って神聖ローマ皇帝とマリア・テレジアの娘、
マリー・アントワネットはフランス王国へと嫁ぎます。
ご母堂マリア・テレジア女帝は、実はえきひいきが過ぎるダメダメ母さんで、お気に入りの四女には十分に愛情を注ぐ一方、生まれつき障碍のあった次女にはつらくあたったそうです。
アントワネットは末娘だったので、たいした注目は浴びてはいなかったようです。

どこまででも政治家なんですね。
いつも政務優先で、夫の浮気にも目をつぶったほどの女傑でした。アントワネットがお腹にいたときにも、軍動員にあってハンガリー議会の承認を得るために、大きなおなかで、はるばるブダペストへと馬車に揺られました。そういう女です。

アントワネットはシェーンブルン宮殿の同じ部屋で育ったすぐ上の姉、マリア・カロリーナとは性格が真逆だったからか、仲が良かったそうです。
カロリーナは後に両シチリア王に嫁ぎますが、母親の血統を受け継いだのか、旦那を尻に引いて政務を率先しておこなうタイプでした。
逆にアントワネットは、父の血統を継いで遊び好きです。

この遊び好きな性格は、「ベルばら」でも十分に描かれています。特にポリニャック夫人登場の後は、賭博仲間に引き込まれ、貴族たちの絶好のカモとして、とことん利用されます。

性格の不一致と申しましょうか、
夫のルイ十六世は狩猟や錠前造りに夢中です。
母親がザクセン公国出身だったためか、ドイツ的な生真面目さを受け継いだようです。
眼の色も祖父(鳶色の目)と違って碧眼です。

錠前というのは、たいへん精巧なしくみでして、それなりに機械学や力学に通じていないと造れないそうです。
王の錠前の師匠の名をガマンといいますが、アニメ版では名前は出てきません。このガマン先生、謹厳な職人ではありましたが、人間としては小心者でした。自分が作成した王の壁掛け金庫に機密書類がしまわれているのを、神経衰弱のあげく公安委員会(革命政府)にタレこみます。機密書類とは、外国の政府に軍事機密を横流しした重要書類でした。これで国王の有罪は決定的となります。


そういう、理系男子とお喋り女子の夫婦ですから、なかなかうまくいかなかったと思います。
ちょっと頭の軽いバカ奥様が、夫のいいところに気がつくのは、革命勃発で逆境になってビンボーになってからです。
photo:06

さて、作中ですが、第2話からマリー・アントワネットは登場します。母親は史実と同じくらい、この甘ったれ娘のことを気遣っています。
ライン川の引渡しは有名ですね。
ここで、母親からもらった指輪を放すことに耐えられず、アントワネットは急にゴネ始めます。
ここに悪のプリンス、オルレアン公が出てくるわけです。
市川治氏が声をあてていることから、作品における適役として設定されていることがわかります。
市川治氏は、長浜総監督の過去の作品でも、一貫して悪のプリンス役でした。
「勇者ライディーン」のプリンス・シャーキン、
「超電磁ロボコン・バトラーV」の大将軍ガルーダ、
「超電磁マシーンボルテスV」のプリンス・ハイネル、
「闘将ダイモス」の提督リヒテル、
「未来ロボダルタニアス」のクロッペン司令ですね。

その延長上に「ベルばら」のオルレアン公がいるのです。
WIKIPEDIAのオルレアン公【ルイ・フィリップ2世(オルレアン公】
を読むと、だいたい長浜路線の想像がつきます。

長浜総監督のオルレアン公(1979/TMS)

オルレアン公の悪だくみから王太子妃アントワネットを、オスカルがお守りするというのが、前半の「ベルばら」の基本です。
オルレアン公はいつも黒幕に徹していて、アントワネットいじめの実行犯はデュ・バリー夫人や、ド・ゲメネ公爵です。
長浜路線が続けば、三部会開催の黒幕、バスティーユ襲撃の黒幕もこの悪のプリンスだったやもしれないですね。
そしてどこで手順が狂ったのか、自分も処刑されるという結末でしょうか・・・。

王太子妃時代のアントワネットの敵はデュ・バリー夫人です。史実では優しい女性だったそうですが、アニメでは来宮良子女史の好演もあってか、たいした悪女です。
来宮良子さんは劇場版「銀河鉄道999」の女王プロメシューム役でも有名な重厚な演技派です。
国王を丸め込み、宝石もドレスもお城も選び放題、オーストリア駐在大使を動かしてまで、
デュ・バリー夫人アントワネットに勝ちをおさめます。アントワネットを陥れるために、彼女付き侍女のオスカルの母親すら利用します。侍女の毒殺なんて、何とも思っていません。


そんなデュ・バリー夫人にも凋落が訪れます。
国王ルイ十五世の崩御です。
今際(いまわ)の際(きわ)の終油の際、聴聞後悔師(ちょうもんこうかいし/お坊さん)は愛妾の追放を言い放ちます。
これで、デュ・バリー夫人の命運は決定しました。
国王快癒に執着するデュ・バリー夫人の姿は、人の業というものをまざまざと見せます。
追放の際、粗末な衣服で護送車に乗せられるデュ・バリー夫人。官吏に平手打ちをみまわれ、鞭打たれる姿はちょっとかわいそうですね。

みかねたオスカルは、ヴェルサイユ市街を出るまで護衛を買って出ます。そこで夫人は身の上話をしますが、これはアニメ版オリジナルフィクションです。第6話への伏線になります。

重要な第6話「絹のドレスとボロ服」ジャンヌとロザリーの初登場編です。

デュ・バリー夫人は、革命勃発後、断頭台の露と消えました。従容と死にゆく貴族や男女の革命家の中、見苦しい最期をみせた唯一の例として名を残しています。
昔、デリヘル嬢をやっていた頃のお得意様が、首切り執行人のサンソン親方でした。往生際が悪いのか、見逃してくれるよう頼んだらしいです・・・、公衆の見ている前で。


今日はここまでです。


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