上腸間膜動脈症候群で死亡した男子高校生(16歳)の報道についての違和感 | 総合診療医:誰もがわかりやすく医療を理解する事ができるブログ

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まず、この件はどうしても専門的な話が必要になる。

 

心臓から出た大動脈は全身に血液が送られるが、途中で何度も枝分かれをして各臓器に血液が送られる。お腹の中に入った大動脈(腹部大動脈)は、途中で「上腸間膜動脈(SMA)」という動脈が枝分かれする。上腸間膜動脈は十二指腸の前側を通っている。

 

通常はこれが十二指腸を圧迫する事はないのだが、特にやせ型の女性においてお腹の中の脂肪が少ないため、十二指腸のクッションとなるものが少なく、その結果、十二指腸を圧迫して狭窄症状を起こす。

十二指腸の通過障害を起こした結果、胃に内容物が蓄積して今回の男子高校生のように嘔吐症状を繰り返す事になってしまう。これが『上腸間膜動脈症候群』の病態である。

 

さて、今回の報道、おそらく医療関係者は非常に違和感があったと思う。

 

まず第1に、病院側の発表が、まるで研修医が診断できなかったせいで死亡してしまったという言い方である。

そもそも、『上腸間膜動脈症候群』は救急外来においてすぐに診断する事は難しい。ましてや経験不足の研修医だけで診断など不可能である。

ただし、この事例に限った事ではないが、同日に再来院した時点で入院させるべきであった。このような事例は、後々見落としなどでトラブルが発生しやすいからだ。

第2に、なぜ病院側は謝罪会見をする必要があったのだろうか?。

 

医療ミスはどうしたって一定の確率で起きてしまう。だからと言って、それら全てを会見する必要はなく、ホームページなどで”研修医”を伏せて謝罪だけで充分である。

この会見、全て研修医の責任に押し付けているとしか思えない。本当の責任者は研修医ではなく、一緒に当直していた指導医、そして研修医だけの診察で帰宅させても良い事を許容している病院側に最大の責任がある。

第3に、この患者さんは入院2日後に心肺停止している事。

 

『上腸間膜動脈症候群』による脱水はあっただろうけど、入院して点滴していれば、まず死亡する病気ではない。つまり、これは研修医が死亡させたのではなく、入院後の管理が悪くて死亡させてしまったと言える。

これら一連の報道、全てを2名の研修医に責任をなすりつけて終わらせようとしていると思った医療関係者は多い事だろう。

この2名の研修医は医療ミスを起こしていない!!。

2人から医師免許がはく奪される可能性はないと思うが、未来ある研修医の今後の医師人生がとても心配である。

 

これを読まれた方で、身内の中に医学生がいるとしたら、日赤愛知医療センター名古屋第二病院には、決して研修に行かせてはいけないと言わせてもらう!!

 

 

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