「右向きはダメ! 左向きで寝るのいい理由」:デマを見抜く | 総合診療医:誰もがわかりやすく医療を理解する事ができるブログ

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最近、次の動画付きの記事を多数の人がシェアしています。
⇒ 『右向きはダメ! 左向きで寝るのいい理由
  
結論として、これはデマです、こんな記事を信じてはいけません!!
そもそも今まで人生を過ごしてきて、右向きに寝ていた人は、何か健康被害がありましたか?、なかったでしょう?。
  
もっとシンプルに言えば、睡眠中に寝返りをうたない方が、はるかに不健康です!!
  

 

 

  
この記事では、左向きで寝るのがいい理由を5つ述べています。
それを、1つ1つ間違いを説明します。
  
⇊まずは1つ目。

 

 

  
リンパは、左側だけに流れているわけではありません。
右側にもリンパはあります。
左側のリンパの流れだけを良くすれば良いわけではありません。
  
⇊次に2つ目です。

 

 

  
全くのウソです!!
  
心臓の位置は真ん中からやや左側にあって、心臓から出た大動脈は、腹部へ流れる際に、確かに左側へと曲がって流れていきます。
ご家族で大動脈瘤の手術をした方がいればおわかりですが、手術した後の創部(傷跡)は左側にあります。
  
ですが、「重力に従い血行が促進される」
・・・これが大きな間違いです!!
  
心臓から出た大動脈は、我々が測定する血圧とほぼ同じです。
血圧と同じ圧を持った大動脈が、重力などに影響されません!!
  
⇊次に3つ目はあえて一番最後に説明するので、4つ目にいきます。

 

 

  
これまたウソです!!
  
膵臓は胃の背中側に存在します。
胃がもたれかかることはありませんし、そもそもその程度で、膵臓の機能が落ちる事はありません!!
  
膵臓の機能が影響されるとしたら、食生活です。
  
⇊次に5つ目です。

 

 

  
バカバカしいほどの大ウソです!!
  
脾臓に入り込む老廃物は、血管(脾動脈)からです
脾動脈は大動脈ほどの圧はありませんが、比較的太い動脈なので、圧もそれなりに高いです。
身体の向きなど全く影響ありません。
  
⇊最後に3つ目に戻ります。

 

 

  
これに関しては一部の人では、左向きの方がいいのです。
  
胃に入った食べ物は、右側に進んで十二指腸に入っていきます。
よって一般的には、この逆方向で
右側向きの方が食道への逆流が起きにくいです。
  
ただしこれは、胃の形にもよるため人様々です。
逆流性食道炎(胃食道逆流症)がある人で、右側向き(右側臥位)の方が逆流が起きにくいという人もいれば、左側向き(左側臥位)の方が起きにくいという人もいます。

例えば「爆状胃」と言って、通常の胃の形が違う人などがそうです。
  

  

絶対に左向きが良いというわけではなく、一般的には右向きの方が良いでしょう。
  
食道への逆流を起こしにくくするには、仰向けの状態で、背中に薄い布団を入れて、上半身は少しだけ持ち上げる事が最も良い方法です。
また逆流性食道炎の症状がかなり強い人は、入眠3時間前には食事を終了して、上半身を上げる事ができる電動ベッドで半座位で寝る事が良いでしょう。
  
そもそも、満腹状態で寝るというこの設定自体、おかしいと思いますが。
  
さて今回取り上げたサイトですが、サイト内で元記事がありました。
この論文を探してみました。
A Novel Sleep Positioning Device Reduces Gastroesophageal Reflux: A Randomized Controlled Trial
  
⇊下にAbstractを載せました。

 

 

  
少々英語が読める人ならわかると思うのですが、この論文は3つ目の胃食道逆流症に関する事だけで、他の1・2・4・5に関しては、全く触れておりません。
  
つまり今回取り上げたサイトは、大幅に話を盛っています!!
しかも中身もウソだらけでした。
ましてや右向きが危険なんて、とんでもありません。
  

 

 

  
ネット記事にはこのようなデマだらけのサイトだったり、大袈裟に話を盛り上げるサイトが多数あります。
アクセス目的かビジネス目的と考えるべきです。
決して騙されないようにしてください。
  
では騙されないようにするためには、どうすればいいのでしょうか?
その1つとして、そのサイトの他の記事を見る事です。
  
⇊次の写真をご覧ください。

 

 

  
上のサイト内にある「おすすめの記事」です。
  
三面記事ばかりです。
しかもこの記事以上に、ここでは見せられない卑猥な記事も多数ありました。
  
つまり記事の発信者のキャラクターを見抜く事が大切です。
1つでもウソ記事があれば、そのサイト自体、全く信じてはいけません。

書籍やネット記事を見る際は、記事だけでなく、誰が?あるいはどこのサイトから?発信されているかの確認も必要です。

  
基本は専門家の発信するサイトをまず参考にすべきです。
では、それはどうすれば良いのでしょうか?
  
その方法は、次のブログをご覧ください。
⇒ 『「ニセ医学」に騙されないための心構え
  

 

 

 

  
また人は、寝返りを何度もうちます。
片方向だけを向いたまま眠っていません。
  
最後に、寝る際に右向きが良いのか左向きが良いのかについて。
本当は仰向けが良いのですが、あえて右か左かと聞かれると・・・
  
答えは・・・
あなたが好きな方を選んでください。
それが、あなたの身体が無意識にリラックスを求めている方向なのです。

  

  

~追記(2018/1/20)~

発信から10か月ほど経っているのに、昨年12月初旬からこのブログへなぜか毎日1000件前後のアクセスがあり、ついに30000アクセスを超えました。

「右向き、寝る」とシンプルなワードで検索すると、このブログがなぜか上位に来ているようです。検索の際、もしも上位に怪しい記事が来ている場合は、範囲を拡げて検索する事をお勧めします。

  

また決して、検索ワードを拡げすぎないようにしてください。拡げれば拡げる程、怪しい記事が上位に出てきますので。

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(画像はネットより拝借)

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