認知症予防のために、特に使いたい身体の部位は? | 総合診療医:誰もがわかりやすく医療を理解する事ができるブログ

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「否定の極論」記事に疲れたあなたへ贈る:「食事」「睡眠」「運動」・・これら「健康の三本柱」をねじ曲げずにポジティブに考えるブログです。

認知症を予防するためには、何をしたらいいでしょうか?。
たとえば、次の答えが出てくるかと思います。
  
「有酸素運動をする」
「アミロイドβがあまり増えないような食事を心がける」
「頭をよく使う事を行なう」
  
そして、楽器の演奏や裁縫など、指先を動かす趣味や仕事を続けていると、認知症になりにくいと聞いたことがある方もいらっしゃると思います。
  

  
何らかの目的を持って指を動かした場合、指令を送っている脳の「前頭連合野」という部位は、左右脳とも一気に活性化します。
  
例えば「指先合わせ」「手足のグーパー」「読み・書き・そろばん(最低1つ)」などがあります。
また「箸で豆をつまんで移動」は、実際の認知症予防のリハビリとしても行なわれています。
  

  
星城大学のリハビリテーション学部の竹田徳則教授らは、次のような報告を行ないました。
http://cws.umin.jp/press-releases/007.pdf
  
#対象
愛知県で、2000年から2005年にかけて65歳以上の要介護状態にない2725人について。
→調べた年代及び年齢から、偏った食事のような影響はないと思われます。
  
#認知症になりにくい人
・趣味がある人はない人に比べて2.2倍
・料理をしている人は3.3倍
・他人の相談に乗っている人は2.2倍
  
料理には創意工夫が欠かせません。味をみることは脳の高次機能の1つです。
男性の方々も、時々は奥様に代わって料理を作ってみてはいかがでしょうか。
ちなみに私は、料理の趣味がありませんけど(#^.^#)
  
このように認知症予防のために、「頭」だけでなく「指」を使う事はとても大切です。
  

  
ところで人間が持っている機能で、一番緻密で複雑な部位と言うと、一部の職種の方々を除いて、ほぼ100%近くの方々が「指」と答えると思います。
実は、もっと緻密で複雑な部位があるんです。
  
それは・・・
  

  
♪♪よくよく噛めよ、噛めさんよ~~ 作:Hisacchiルンルン♪♪
  
人間が持っている機能で、一番緻密で複雑な部位・・・それは「歯」です。
「噛む」という行動は、手足を動かす事より緻密で複雑なのです。
『芸能人は歯が命』なんていうCMもありましたね。
  
次の研究結果がありました。
  

  
「アジア・オセアニア国際老年会議」:東北大学の渡邊誠・歯学研究所教授のグループより。
  
宮城県仙台市内の70歳以上の高齢者1167人に、自前の歯の数と認知症との関連についての発表がありました。
 
#結果
・認知症が全くない:14.9本
・軽度の認知症が疑われる:13.2本
・認知症の疑いが強い:9.4本 でした。
  
またMRIを使って脳の容積を調べると、残っている歯の半数が少ない人あるいはかみ合わせる本数の少ない人ほど、記憶を司る脳の「海馬」付近や、意思・思考などを司る「前頭葉」などの容積が減っていました。
 

  
他の報告も紹介します。
   
(1)下顎の歯をすべて抜いた猿の脳を調べたところ、歯があった特に比べて、脳の明らかな委縮が認められました。
   
(2)正常なマウスと先天的に歯の生えない大理石骨病のマウスを調査したところ、歯のないマウスだけが、アルツハイマー病の原因の1つでもあるアミロイドβ蛋白が多数検出されました。
   
(3)総入れ歯の人が、入れ歯を入れた時と外した時に、それぞれ片脚立ちを試してみたところ、入れ歯を外した時の方が、明らかに倒れやすいという結果が出ました。
  

  
#噛む事の効果
何といっても、大きな効果は「認知症の予防」です。
他には上の写真のように、「歯周病予防」「肥満の抑制」などの効果もあります。
  
よく噛むことで、唾液が多く分泌されます。
唾液には成長ホルモンや体のエネルギー源である「ATP」を作ってくれます。
ちなみに成人が1日に出す唾液の量は、平均1.5Lとされています。
  
※過去のブログより
一口30回噛む効果、そして実行する方法は・・・
  
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また噛むことは顔~顎の筋肉だけでなく、首の筋肉も使います。
首の筋肉を使うことで、頸動脈を広げることもできます。
  
絶食で経管栄養を行なっている人は、顔~顎~首の筋肉を使わないため、残念ながら日に日に認知症は進んでしまいます。
一方で、噛むことで脳血流が増加し、特にドーパミンやノルアドレナリンなど思考力や集中力を高めるホルモンの分泌が高まります。
   
  
これに関連する論文(英文のAbstract)もあります。
⇒ 『Compartmental neck fat accumulation and its relation to cardiovascular risk and metabolic syndrome.
  
この論文は、悪性腫瘍または良性の病因を治療された303人の被験者を対象としました。
その結果、首の周囲の脂肪量が多いと、心血管系の病気が増えると
いうものでした(具体的な数値は示されていませんが)。
  
首が太い人は、身体全体も肥満傾向ですし、また首周囲の脂肪だけを減らす事は難しいですが、よく噛む事はとても大切です。
  

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更には、噛むことでダイエット効果も期待できます。
(1)満腹中枢が刺激されて食事量が減る
(2)食事によって消費するエネルギー量がアップする
  
よって特に歯が悪い人や入れ歯が合わない人は、定期的に歯のメンテナンスをされてください。
近年、歯周病が様々な内科的疾患の原因になる事が報告されております。
もちろん歯が悪くない人も、『歯は命』ですよ!(^^)!
  
(画像はネットより引用)