氷食症=鉄欠乏性貧血 | 総合診療医:誰もがわかりやすく医療を理解する事ができるブログ

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「否定の極論」記事に疲れたあなたへ贈る:「食事」「睡眠」「運動」・・これら「健康の三本柱」をねじ曲げずにポジティブに考えるブログです。

暑い時期になると、ついつい氷を食べたくなってしまう方が少なくありません。
個人的には、胃を疲れさせないためにも、かき氷やアイスクリームは、できれば胃が温まった食後に食べてほしいと思います。
  
さて季節とは無関係に、無性に氷を食べずにいられない場合は要注意です。
これは実は「#氷食症(ひょうしょくしょう)」と言う病気の可能性があります。
  

氷食症

  
#氷食症の症状
とにかく氷を食べずにはいられないことです。
ですから、氷食症そのものの問題はお腹を下すこと程度で済むのです。
  
ところがこの氷食症には隠れた病気があります。
それは「#鉄欠乏性貧血」です。
  

鉄欠乏性貧血1

  
#鉄欠乏性貧血の症状
「鉄欠乏性貧血」ですので、男性よりも月経がある女性に頻度が多い病気です。
疲れやすい、頭痛、食欲不振、息切れ、動悸、顔色が悪い、めまいや立ちくらみ、神経過敏、記憶力の低下、寝起き寝つきが悪いことなどの症状があります。
  
これらの症状の中には、鉄欠乏性貧血に特有の症状はありません。
上の写真の「爪が平らになったり、反り返ったりする」
・・・専門的には「スプーン状爪」と言いますが、この所見がある人は滅多にいません。
私も四半世紀以上医師をしていて、たった1人しか経験がありません。
  
そして、注意が必要な事!!
神経過敏が主訴の場合は、精神疾患と間違えられる可能性もあります。
訴え方次第では、本当の病気は鉄欠乏性貧血なのに、向精神薬が処方される場合もあります。
  

鉄欠乏性貧血2

  
#氷食症の原因
なぜ鉄分が足りないと氷が食べたくなるのか?。
それはまだよく分かっていないのが実情です。
  
鉄欠乏性貧血により、自立神経に狂いが生じて体温調節がうまくいかなくなることがあります。
そうすると、口の中の温度が上がってしまうことがあり、熱くなった口の中を冷ます為に、ついつい氷を食べてしまうという説があります。
  
また、鉄分の不足により食べ物の嗜好が変わり氷を食べてしまうという説もありますし、強迫性障害の一つとして考えられることもあります。
  

ヘム鉄2

  
#氷食症の予防と治療
氷食症の予防・治療=鉄欠乏性貧血の予防・治療でもあります。
  
特に大切なのはバランスの良い食事です。
一番のお勧めはレバー、他にはほうれん草、小松菜などの鉄分の多い食材を摂取すること。
鉄の吸収を助ける働きのあるビタミンCが多く含まれている食材を摂取すること。
  
また、鉄は胃液が多く分泌されると吸収されやすくなるので、お酢などを使った酸味のある食事を摂取することも効果的と言えます。
  
尚、コーヒーの飲み過ぎは鉄の吸収を悪くするので、控えめに摂取すべきです。
  
食事だけで十分に鉄分を摂れないようなら、病院で鉄剤を処方してもらったり、街中の薬局で「ヘム鉄」のサプリ
上の写真のように、鉄分の吸収率が高い)を購入しても良いでしょう。
  

ピロリ菌4

  
氷食症の疑いがある場合、血液検査(赤血球、鉄、フェリチンなど)で、「鉄欠乏性貧血」があるかを確かめてもらいましょう。
鉄分が極度に不足していれば、鉄剤が処方される場合もあります。
  
また胃の中に「ピロリ菌」がいる場合、「鉄欠乏性貧血」を合併している事があります。
胃炎症状も伴っている場合は、胃内視鏡検査を受ける事もお勧めします。
  
ちなみに私も学生時代、ピロリ菌感染と鉄欠乏性貧血がありました。
このため、体力がなくスポーツでは目立たない、集中力がなく落ちこぼれ、この2つが揃っていたので、当然女の子にはモテませんでした・・・どうでもいいけど(+_+)
  

  
この先は、余談です。
「かき氷」は元々「欠氷」でした。
  
史実上の記録は平安時代、清少納言の『枕草子』に出てきました。
当時のかき氷は小刀で削るもので、特権階級しか口にできないものでした。
  
そもそも現在のように冷蔵庫すらなかった時代において、氷を食べる事などできませんでした。
製造した氷の一部が欠けたものだけを食べる事から、「欠氷」という言葉が生まれました。
  
また1869(明治2)年、横浜にある馬車道で、町田房造が初めての氷水店を開店しました(下の写真)。
ちなみにここは、日本において「アイスクリーム」を発祥させた店でもあります。
当時の「あいすくりん」の値段は、現在の価格にすると何と8000円でした!!
  
かき氷が大衆化したのは、明治20年頃とされています。
余談でした。
  

  
よろしければ、こちらもお読みください。
⇒ 『アイスクリーム頭痛
  
(画像はネットより引用)