今国会で改正された雇用保険法の注目ポイント | 静岡県三島市の社会保険労務士 ひるみ人事サポート 蛭海直隆

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現在、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、31日以上引き続き雇用されることが見込まれる従業員については、雇用保険の被保険者とされています。2024年の通常国会で改正雇用保険法が成立し、この被保険者となる従業員の範囲が拡大することになりました。この改正点の施行は2028年10月とまだ先ですが、実務への影響も大きいため他の改正点とともに確認しておきましょう。

 

1. 雇用保険の適用拡大

雇用保険の被保険者でなければ、基本手当(いわゆる失業手当)や、育児休業を取得した時の育児休業給付等は受給できません。働き方や生計維持のあり方の多様化が進展している中で、週の所定労働時間が短い労働者が増えています。そのような背景から、雇用保険の被保険者の範囲を拡大する必要があると判断され、「1週間の所定労働時間が20時間以上」という要件が「1週間の所定労働時間が10時間以上」に変更されることになりました。

 

2. 被保険者期間の算定基準

基本手当を受給するには、退職日前2年間に、雇用保険の被保険者であった期間が12ヶ月以上(倒産・解雇等の理由により退職した場合は退職日前1年間に6ヶ月以上)必要になります。ここでの「1ヶ月」とは、賃金の支払の基礎となった日数が11日以上ある月または賃金の支払の基礎となった時間数が80時間以上である月を指します。

雇用保険の適用拡大に伴い、被保険者の賃金の支払の基礎となった日数が6日以上ある月または賃金の支払の基礎となった時間数が40時間以上である月を「1ヶ月」とすることに変わります。

 

3. 給付制限の見直し

現在は、自己都合で退職した従業員が基本手当を受給しようとするときには、原則として2ヶ月間の給付制限期間(基本手当が支給されない期間)が設けられます。

今回の改正で、退職した後や、退職日前1年以内に、一定の教育訓練を受講した場合には、この給付制限が解除されることになりました。また、2ヶ月間の給付制限期間を1ヶ月に短縮する通達改正が行われる予定です。

なお、現状、5年間で3回以上、自己都合で離職した場合には給付制限期間が3ヶ月となりますが、この点は改正されず継続される予定です。

この「給付制限の見直し」は、雇用保険の適用拡大に先立ち、2025年4月1日に施行されます。

 

雇用保険の適用拡大により、被保険者となる従業員が増えることで、会社としての雇用保険料の負担の増加、そして、各種手続き数の増加に伴う事務負担が生じます。適用拡大が施行されるまでにはまだ時間がありますが、特に短時間のパートタイマー・アルバイトが多い企業では、施行後の影響を事前に確認しておきましょう。