多くの会社では、年次有給休暇のほかにも従業員に慶弔が生じた際などに休暇を与える「特別休暇」を設けています。特別休暇は任意の制度であることから、安定的な運用を行うには、細かな取扱いのルールを決めておくことが重要です。以下では、その取扱いルールを規定する上でのポイントと最近注目を浴びる孫休暇をとり上げます。
1. 特別休暇の種類
厚生労働省作成のパンフレット「特別休暇制度導入事例集2023」では、特別休暇を以下の3つに分けています。
① 年次有給休暇の取得促進に資する特別休暇例:病気休暇(有給)
② 予測できない事情に備えた特別休暇例:裁判員休暇・災害休暇
③ 従業員の多様な活動を支援する特別休暇例:ボランティア休暇・自己啓発休暇
2. 特別休暇を設ける際のポイント
休暇は就業規則への必要記載事項になることから、特別休暇を設ける場合、就業規則等へ規定する必要があります。その際、以下について検討が求められます。
① 特別休暇を取得できる従業員の範囲
特別休暇はその趣旨に基づき、対象者を決定することが必要です。例えば、勤続1年以上の従業員や試用期間満了後の従業員など、対象者を限定することが可能です。
② 特別休暇の対象となる事由と休暇日数
従業員の結婚や配偶者の出産、身内の不幸など、特別休暇の対象とする事由(取得目的)は様々です。会社において特別休暇を設ける事由や、そのときの休暇日数を検討します。
③ 特別休暇取得時の賃金の取扱い
年次有給休暇を取得したときには、その名称の通り、有給休暇として「所定労働時間労働した場合に支払われる通常の賃金」等の支払いが会社に求められます。一方で、特別休暇を取得したときの賃金の取扱いについては、会社が自由に定めることができます。一般的に慶弔に関する特別休暇は、祝福やお悔やみの意味から有給とする会社が多いことを前提に取扱いを検討するとよいでしょう。
3. 注目を浴びる孫休暇
最近、自治体等で、孫休暇を設ける動きが見られます。これは、祖父母である従業員が孫の世話や看病のために取得できる休暇です。子育て世代を支援し、子育てを社会全体で行うことの機運を醸成することを目的として、創設を検討する動きが見られます。
育児・介護休業法では規定されていない休暇であるものの、育児の支援策の一環として創設が期待される休暇でもあります。
特別休暇の運用において、複数日取得できる休暇を分割して取得する申出があったり、事由が発生した日から相当程度の期間をおいて取得する申出があったりと、対応に困ったというケースもあるでしょう。この機会に、過去の事例を振り返り、規定を見直してもよいかもしれません。