通常国会において、改正高年齢者雇用安定法案が審議され、2021年4月にも70歳までの就業機会確保が努力義務化される方向となっています。そこで今回は厚生労働省の令和元年「高齢者の雇用状況」の集計結果から現在の高齢者雇用の状況を見た上で、改正法案の概要についてとり上げます。
1.65歳定年の状況と66歳以上働ける制度のある企業の状況
①65歳定年の企業
今回の集計結果をみると、定年を65歳にする企業は27,713社(対前年2,496社増加)で、報告した企業全体の17.2%となっています。企業規模別にみると、以下のようになっており、企業規模に関わらず、65歳定年としている企業がこの1年間で概ね1割増加していることが分かります。
②66歳以上働ける企業
66歳以上働ける制度のある企業は49,638社(対前年6,379社増加)で、報告した企業全体の30.8%を占めています。企業規模別にみると、以下のようになっています。
また、66歳以上働ける制度のある企業の状況をみると、報告した全企業の上位3つの制度は「基準該当者を66歳以上まで継続雇用する」が10.3%、「その他の制度で66歳以上まで雇用する(※)」8.8%、「希望者全員を66 歳以上まで継続雇用する」6.8%となっています。
※「その他の制度で66歳以上まで雇用する」とは、希望者全員や基準該当者を66歳以上まで継続雇用する制度は導入していないが、企業の実情に応じて何らかの仕組みで66歳以上まで働くことができる制度を導入している場合を指しています。
2.70歳までの就業機会確保の方向性
現在の継続雇用年齢は65歳までとなっていますが、企業に対して70歳までの就業機会の確保措置を努力義務とする改正法案が今春の通常国会で審議される予定となっています。この就業機会確保措置の選択肢としては、以下のものが挙げられています。
各種報道によれば、この法案は通常国会で成立し、早ければ2021年4月に施行される見込みとなっています。影響の大きい改正法案だけに、継続して国会審議を注目しておきたいものです。
高齢者の雇用を進めるにあたっては、職場の安全と健康管理の取組みが不可欠となります。働くことができる制度の整備とともに、従業員に長期間、職場で活躍してもらうためのしくみの検討も必要になります。