本 能 | 新宿 鼠通り

新宿 鼠通り

逃れよ…強壮な風の吹くところへ…

 

 

 

 

 

 

「もう…私を…施設に…入れてちょうだいよっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

認知症が…また少し…進行した母が…

 

耐えきれずに…言い放った…

 

「…施設で…暮らせば…シアワセなのかよ?

年老いたら…脳が衰えるのは…自然なことだろ…

家族に迷惑をかけるから…と…自分を犠牲にして…逃げるのではなく…

どうすれば…現状を維持できるか…戦うことは…できないのか?」

 

 

「…私の…世話をするなんて…イヤなんでしょ…」

 

 

「…イヤとか…イヤじゃない…とかじゃないよ…

親の面倒を見ることは…本能…なんじゃないかな…

僕の…遺伝子に組み込まれている…本能…」

 

 

 

 

 

ケアマネージャーと…母が通所しているデイサービスの所長と…そして僕との…

 

 

担当者会議を翌日に控え…

 

 

どのような介護サービスが…母に適しているのかを…探るため…

 
 
いまの気持ちを…聞いてみた…

 

 

母は…とにかくデイサービスには…行きたくない…の一点張り…

 

 

では…他のデイサービスはどうか…

 

 

あるいは通所ではなく家に来てもらう訪問介護はどうか…など…

 

 

いろいろ…提案しても…

 

 

どれもこれも…イヤ…

 

 

そもそも…サービスなんて受けたくない…と言いだす…

 

 

 

「…このまま…部屋に引きこもって…何もしなければ…認知症は…進行するばかりだぞ…」

 

 

「…いいわよ!早く進行して…何にもわからなくなっちゃいたいわっ!」

 

 

「認知症のひとは…感情は鋭敏のまま…らしいぜ…

 そう簡単に…ボケたもん勝ち…にはならないらしいぜ…」

 

 

「…もう!…なんで…介護申請なんてしたのよっ!」

 

 

「…おかしな行動が多くなって…目を離せなくなって…こっちも大変になってきたからだよ…」

 

 

「…ああ!お金出して!あなたが…お金出して…」

 

 

「…ん?…」

 

 

 

 

 

「もう…私を…施設に…入れてちょうだいよっ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母が要介護になってから…

 

 

ケアマネージャーやデイサービスとのやりとりが増えて…

 

 

会議やら連絡やらで…時間も取られるようになった…

 

 

24時間365日…仕事優先…

 

 

30年近く…あたりまえだった…僕の日常を維持することが…

 

 

できなくなった…

 

 

それは…イヤ…というより…

 

 

また…新たな試練が…立ちはだかった…って感じ…

 

 

これから…
 
 
母の日常に…参加する時間を増やし…
 

 

いつか…

 

 

母の旅立ちを…

 

 

後悔なく…看取ることができれば…

 

 

僕は…ひとらしく…なれる気がするんです…

 

 

ひとが…ひとらしくあるための…本能に従う…

 

 

それは…

 

 

僕の…シアワセに…

 

 

繋がることだと思うのです…