ヒルは生き物ですから、その旬があります。いま、正にその時期です。
山に入れば実験対象のヒルは大活躍だし、実験室ではその生態を知るためにいろいろな実験装置がフル稼働しています。
と、大げさに言うとこうなりますが、貧乏所帯の子どもヤマビル研究会は食品トレーやキムチのビン、卵豆腐の空きケースなど廃物を駆使して経費を浮かせています。今流にカッコよく言えば、SDGsに参加しているのです。
前置きはそこまでで、今日はとても慎重さが必要な実験の準備段階です。新しく入ったた研究員は中々そこが分からないですが、簡単なことだけど最大級の慎重さが求められる実験を4つやります。
生物の研究は、いい時期を逃すと1年間待たないといけないので、特に新会員は厳しく説明しました。例えば、単にヒルを20匹装置の中に投入するという単純なものでも、指にまとわりつくヒルをデコピンしながら入れるのはなかなか困難です。
6/11にセットした時のヒルの数を数えてみたら、18匹投入したはずが14匹しか見つからない。どうも2回カウントされたヒルがいるらしいという結論となり、かずを数えていくのに集中していないと間違えます。落語の「ときそば事件」とそっくりです。
そのことに気づいた中学生研究員が、今日は俺がやる。みんなは黙って見ているように、声は絶対出すなと、指示をして御在所と藤原の岩石のどちらを好むのかの実験を開始しました。
前回のヤクザル調査隊の総括会議で、今年は厳重に数を管理してデータを出すようにご指導いただいたので、研究の中心を担っている中学生研究員は、特にピリピリしています。
慣れない新会員は、何事が始まるのかと正座して真剣U研究員のすることを見つめていました。新会員のM研究員は、間違うといけないのでノートに正の字を書きながら協力していました。息も詰まるような緊張感の中で、20分くらいでセットが完了しました。20匹無事数えられました。
たかがこれだけのことですが、準備から完了まで3時間近くもかかました。
みんな緊張感からどっと力が抜けて、ふぅーっとため息を吐いてゴロンとしていました。
先週修学旅行だったU研究員がみんなにおみやげを買って来てくれたのでいただきました。U君ありがとう。優しいですね。
時計を見るともうお昼前、少し早いがお腹が空いたのでランチタイムにしました。1日目の昼食は、全員家から持って来ることにっているので、お母さんの手作り弁当からコンビニ弁当までいろいろです。
午後の前半は小学生研究員の活躍の時間です。ずっと飼育することになった鶏にヒルを付けて吸血させます。もう、4回目になるので鶏も馴れて来て、おとなしく固定装置に入ってくれます。子ども研究員は鶏の気持ちを考えながら吸血時間中(約3時間)猫などの外敵に襲われないようガードしながら、面倒をみます。この方もかなり上手になり、鶏に話しかけながら水を与えたりたべものを与えたりしています。
さて実験開始となり、U研究員から小学生もヒルをつける練習をしなさいという指示が出て、みんなヒルを手に鶏につけました。ポロポ落ちます。10分たっても付かないのでU研究員を呼びに行きました。小学生の付け方を一通り見た後、ヒルが吸いたいと思うように付けないと、ヒトの指から離れない。このようにして付けるのだ、と言いながら鶏に近づけると、何とヒルはU研究員のいうことをちゃんと利くのです。アッという間に11匹のヒルをつけました。さすが!! という称賛の声があがりました。
3時半ころから満腹になったヒルは次々と落ち始めて、産卵用の飼育ケースに移されました。
4時になりまだしつこく吸い付いているヒルがいたのですが、実は今日の最大の実験が待ち受けているので、無理やり剥がしました。
みんなは実験室に移動して、既にオペの準備が整っている机のまわりに座りました。
今日は、満腹に吸血したヒルがどこに血を貯めているかを検証します。執刀はU研究員です。
いつもと勝手が違うのはボールのように転がっていくので、固定が難しいのです。下手にピンを刺すと嗉嚢を傷つけてしまうからです。10分以上かかって何とか固定に成功しました。縦にメスを入れます。皮ふだけを切るので慎重に切りすぎないように気を付けて切っていきます。
順調に腹側を切り、ピンを使って広げていきます。
だんだん開かれて行くのを固唾をのんでみんなは見守っています。
30分くらい経った頃、お腹は完全に開かれ、予想通り嗉嚢と嗉嚢盲管がパンパンに膨れていました。
今までは無理やり口から牛乳を押し込んで調べていたので、今回はヒルが主体的に吸血してそれを嗉嚢・嗉嚢盲管に貯めていることをみんなで確認したことになります。
この黒いのが嗉嚢・嗉嚢盲管です。膨れています。その一つを切ってみると、どす黒い血が出て来ました。
以前もやってみたことですが、この流れ出た血に別のヒルを近づけたら、
この様に吸いついて、吸血を始めました。共食いだ、と叫んでいました。
この共食いは、5年前O研究員が偶然発見して、ヒルは生きた大型動物の血しか吸わないと言われていた考えを覆し、新発見となった実験です。(ヒルは木から落ちてこない――僕らのヤマビル研究記 山と渓谷社 の中に、詳しくその時の様子が載せてあります)
ここで、本日のオペは終了します、とU研究員が宣言して、ものすごい緊張の時間は終わりました。しばらく誰も動きませんでした。
夕食を済ませて、小雨の中ホタルをみにでかけました。すーーぃすぃ、と飛ぶホタルをみて癒されて帰りました。
ものすごく充実した研究日となりました。
みなお疲れ様。ゆっくり休んでね、