夕食を食べている間に、ひそかに忍び寄りI研究員の足でちゃっかり食事をしていたヒルAは、私たちの実験に協力してくれた。
吸血したヒルAは、そのままI研究員の飼育ビンに入り、産卵することを期待されることとなった。
Aを取り外したところは、当然ヒルジンの性もあって簡単には止血できない。それを逆手にとって、ポイゾンリムーバという毒虫などに刺されたときに毒を吸い出すのに使われる簡易救急用品があるが、それを使ってヒルジンごと吸い出してやろう。そうして出てきた血液を別のヒルに吸わせようという実験である。
まず、ポイゾンリムーバでI研究員の足から血液を吸い出した。
数分かけて0.5ccくいがやっと取れた。
早速それを食品の入っていた3×4cmくらいの塩ビ製のケースの中央に移した。べっとりしているのでなかなか一か所に血を集めることはできない。何とか入れた。そして、ビデオをとることにした。

捕獲ビンの中から別のヒルBを取り出して、このケースに入れた。
その時の映像をアップしたいのだが、このブログはそれができないことが判明したので、数カット静止画にしてアップする。
①ケースに入れても、ヒルは私たちの方に頭を向けて盛んに獲物をあさっている。これは、私たちの呼気をキャッチしている行動である。
②竹ひごでヒルの頭を無理やり血のある所に押し付けてやった。すると、血液を口が察知したのか、血を吸い始めた。

➂掃除機のようだと研究員が言うとおり、底をなめるように血を吸っていく。

④ところが、ヒルが進んでいる方向に血がなくなってしまうことがある。すると、すぐ呼気に反応し始めて、ヒルダンスをする。再び血のある方に向けてやると吸い始める。
このことは、血液を見つけているのは触覚のみで、視覚も嗅覚もないことがわかる。
⑤ある程吸うと、それをおなかの後ろの方に移す蠕動運動をする。
⑥ ほとんど吸い込んで、ヒルBも確実に太くなっている。
分かったことは、口の先端が血液に触れると即吸血するということである。生きた動物の血を直接吸うということになっているが、そうでないケースが見つかったことになる。
これで、偶然の発見以来今年になって5例目の実験である。みんな同じ結果を得ているので、このヒルの行動は、当個体の固有のものではない。
やっと、動画をとることに成功した。
「生きた獲物から直接吸血する」という定説は、そうでない事例もあるということを示してくれた。
実は、翌日の解剖でもこのようなことを裏付ける動画が撮れた。別のページに譲ります。