●離婚のプロ
このお話は、昨日のブログ(●婚前契約)の続きです。
従って、昨日のブログ(https://ameblo.jp/hirosu/entry-12386624737.html)
を先にお読みください。
そしてから下をお読み下さい。
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[前回までのあらすじ]
ある女性が資産家の男性と結婚したとします。
資産家の男性は、5つのビルを持ち、3つの山を所有していました。
つまり、女性は玉の輿に乗った訳でした。さて、財産は半々になるかと言うと、そうはいきません。
実は、日本の法律では、特有財産は離婚の時の分配の対象としないとなっているのです。
特有財産とは、夫が結婚前にすでに所有している財産です。
例えば、結婚する前から夫が持っていた5つのビルと、3つの山は特有財産となり、
離婚時の分配の対象外となる訳です。でも、それは日本での話。世界には世界の法律があるのです。
例えば、アメリカでは、ネバダ州やテキサス州、カルフォルニア州など、
結婚前に所有していた財産を明確に証明出来なければ、全て離婚時は半々にするという法律の州があります。
つまり、下手をすれば結婚後、1年で離婚しても全ての財産は半々となる訳です。
そこで登場するのが、日本では馴染みのない婚前契約です。
離婚した時に、今まで築いた財産を半分持って行かれ無い様に、
結婚前に、万が一離婚した時の条件を約束しておく契約書を作成するのです。
そんな婚前契約書ですが、婚前契約書で思い出されるアメリカでの霊的な出来事がありました。
ある時、霊能者の所にメアリーという若い奥さんが駆け込んで来たといいます。
彼女は、高校生の時に父親を亡くし、
それ以来ウェイトレスのアルバイトをしながら、
ひとりで病気の母親の面倒をみていました。
そんな時、
彼女が働いていたレストランに地元にある会社の社長が訪れ、
一目でメアリーの事を見初めた社長は、彼女に結婚を申し込んだのでした。
社長はメアリーが毎日バスで行き来していると聞くと、すぐに車を買ってくれた程です。
それはまるでシンデレラ・ストーリーの様でした。
昨日までは明日のお金にも困っていたウェイトレスの彼女が、
その日から、悠々自適な生活を送れる社長夫人となったのです。
1年後には、男の子が生れ、
ご主人の温情で病気のお母さんにも毎月仕送りをしてもらいました。
夫の会社も順調で、新たに始めた会社も大当たり。
家には、執事とお手伝いさんが2人、他にも庭師と運転手が雇われていて、
メアリーは何不自由の無い生活を満喫していました。
ところが、夫の事業が好調になり、新たな会社も大当たりした頃から、
夫の外出は多くなり、外泊する事も多くなったといいます。
風の噂では、夫は新しく出来た会社の若い美しい秘書と浮気をしているらしいというのです。
やがて、それが現実の危機として、彼女に突きつけられる時がやってきました。
それは5月に入ったばかりの朝の事です。
夫が急に、離婚しようと言ってきたのです。
そしてそれはとても厳しいもので、かつ絶対的なものでした。
今月の5月31日までに離婚に応じれば、
今まで通り病気のお母さんに2年間は毎月仕送りしてやるが、
応じなければ、無一文でここから出て行く事になるぞと言ってきたのです。
実は、彼女が結婚する時、
夫の提案で、二人で婚前契約書を交わしていたのですが、
その婚前契約書の中身は、彼女にとってとても不利な契約書だったのです。
■まず、夫が結婚前に所有していた財産が明確に記載されていたの勿論ですが、
その他にも将来的に会社の株券が増えても、それは離婚のときの分配の対象外にする事や、
■子供の親権は夫のものとする事や、
■離婚時の慰謝料は無しとする事など、夫にとって有利な事ばかりが書かれていたのです。
■また、病気の母親に仕送りする事は、温情でなされた事で、契約書には書かれていませんでした。
結婚する時は、余りの嬉しさで、
何ページもある長い婚前契約書をいちいち検討して、
一部を問題にする事無くサインした彼女でした。
なにしろ、変な難癖をして結婚が止めになるのも嫌だったし、
なにより彼を信頼していたからです。
しかも、その後分かった事ですが、
彼は既に3回も離婚を経験している人だったのです。
アメリカには、沢山の弁護士がいて、それぞれ専門分野に別れているケースが多く、
ある弁護士は、野球選手などが球団と交渉する時に、
有利になるように契約を結ぶ専門の仲介をおこなったり、
またある弁護士は、今回の様に離婚を見据えた婚前契約書の作成のプロの人もいるそうです。
夫は今までの3回の離婚の時も多分そうだったのでしょう。
今回もきっと婚前契約書の作成のプロの弁護士を雇っていたのだと思われました。
しかも、離婚原因として、
彼女がいつも家事をしないとか、
出先で他の男性と親しくしているなどをでっち上げて来たのです。
家事はお手伝いさんが2人がいつもやっていて、彼女がする必要が無かったからで、
また出先で、知り合った男性にキスされた瞬間を写真に撮られていたのも、
全部夫が仕組んだハニートラップだったに違いありません。
言い方は悪いかもしれませんが、
夫は離婚のプロだったのです。
こうして困り果てた彼女が、霊能者の所に駆け込んできたのは、
夫が提示した5月31日の期限の僅か4日前でした。
あと4日までに離婚をしないと、病気の母親への仕送りもストップしてしまいます。
夫が雇った3人の弁護士によると、メアリーが所有する財産は、
結婚前に買って貰った自動車のみという事でした。
つまり、5月31日までに離婚に応じないと、
彼女は文字通り一文無しで、家から叩き出されてしまうといいます。
もし、こんな相談を私がされたら、
きっと、そんな旦那さんなら別れた方がいいです。
5月31日までに離婚して、2年間でも病気のお母さんに仕送りしてもらいなさい。
と言うほか無かったでしょう。
しかし、
霊能者のアドバイスは、とても意外なものだったのです。
メアリーが駆け込んでくると、
霊能者の方は、お水を出して彼女を落ち着かせてから、
静かに霊視を開始しました。
すると、霊能者の方がこんな事を言いました。
「片目の年配の男性が現れましたが、
貴方のお父さんでしょうか?」
すると、メアリーが、
「はい、父だと思います。
父は亡くなる1年前には、糖尿病で右目を失明していましたから。」
「そう。
お父さんがね。 こう言っているの。
メアリーよ。
ああ、愛しいメアリーよ。
離婚してはダメだ。
決して、離婚してはいけない。
いいね。」
それを聞いたメアリーは、
「ああ、お父さん、
でもママの治療費をどうやって工面したらいいの?
5月31日までに離婚しないと、ママも私も終わりよ。
ああ、どうして離婚してはダメなの?
父さん、どうして?」
霊能者いわく、
お父さんは、離婚してはいけない理由は、一切言わなかったという。
ただただ、離婚してはダメだ。という言葉を何回も伝えて来ただけだったという。
結局霊視で分かったのは、それだけだった。
あとはメアリー自身の選択となった。
彼女はそれから4日間考えて、考えて、
結局亡きお父さんの言葉を信じて、離婚しなかった。
「ごめんね。母さん、
もしかしたら、私達これで路頭に迷ってしまうかしれないの。」
やがて、5月31日が過ぎ、6月となった。
夫の怒りは離婚しなかった妻に向けられ、
3人の弁護士は、さっそく離婚裁判に動き出した。
「せっかくチャンスをやったのに!
一文無しで追い出してやるから、見てろよ!」
その日から、寝室は別となり、
家には、若い秘書が平然と出入りする様になった。
メアリーにとってとても辛い時期が始まった。
メアリーは弁護士を雇うお金も無く、ただ一方的に勧められる裁判を見守るだけだった。
裁判に出廷した時も、自分が明らかに不利になっていると感じた。
メアリーに出来たのは、
この家を追い出される日まで、思いっきり息子と愛犬を抱きしめる事ぐらいだった。
ほぼ勝利を確信した夫は、
若い秘書と旅行に出かけた。
ところが、それから2日後の夜の事だった。
一本の電話で彼女は起こされた。
それは警察からだった。
「ご主人が、山登りの最中に滑落しまして、
残念ながら、お亡くなりになりました。」
ご主人は大学時代、山岳部に所属していた事があり、
何か嬉しい事があると、よく山に登って日の出などを拝んでいたという。
その日もワシントン州の北部にそびえるレーニア山に登山に出かけたという事だった。
全ての財産は彼女と息子のものとなった。
私から言わせてもらえば、
あの時、亡きお父さんが、夫が亡くなる事を言ってくれれば、
もっと楽な気持ちでメアリーは判断出来たし、待てたのに。と思うのだが、
霊能者いわく、
現われた霊達は、決定的な事。特に人の死については口にしない事がほとんどだと言う。
それはまるで、言ってはいけないルールが霊界にあるかの様だと。
「じゃあ、お父さんは、夫が死ぬのを知っていたのかな?」
と霊能者の方に聞くと、
彼女は静かにこう答えた。
「多分、知っていたでしょうね。」
END