●悲しみの相殺
このお話は、昨日のブログ(●愛犬と大親友を同時に失くしたリサ)の続きです。
従って、昨日のブログ(https://ameblo.jp/hirosu/entry-12330036103.html)
を先にお読みください。
そしてから下をお読み下さい。
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[前回までのあらすじ]
私がアメリカに留学している時、大学内にある図書館でアルバイトをした。
その時に、2年先輩のリサさんという学生に仕事の仕方を教そわった。
ある日、彼女がドタキャンで仕事を休んだ。
電話を受けた人の話によると、愛犬の具合が悪くなり病院に連れて行くという。
彼女の愛犬の写真も見せてもらった事がある。常に持ち歩いていて、溺愛していた。
10歳のゴールデンで、チコと名付けていた。
彼女が家に帰って来ると、玄関でお出迎えしてくれて、
朝も目覚ましが鳴っても起きないと、起こしに来てくれるという。
2週間後、そのチコが死んだ。彼女の落ち込みようは、傍から見てもよく分かった。
1週間経っても、彼女は立ち直れなかった。そんな時、彼女に更なる悲しみが襲った。
彼女の大の親友で、同級生だったエイミーが交通事故で亡くなったのである。
エイミーは、ゴールデンのチコが病気になった時も、車で病院に連れてってくれたり、
ペットロスになっていたリサの家に毎日行って、リサを慰めてくれていた人だった。
それから何日か彼女は大学も仕事も休んだ。そんな元気の無いリサが、ある日、私に、
「チコやエイミーは、天国に行ったのかしら?」と聞いて来た。
私は彼女にこう提案してみた。「私の知り合いに霊能者が居るんだけど会ってみる?」
彼女は家に帰ってから、何か感じるものがあったのか、
翌日仕事場で会うなり、私に「霊能者の所に行く」と頼んで来たのである。
図書館の仕事が終わり、私達は午後3時に私の寮の前で待ち合わせとなった。
私も彼女も車を持ち合わせていなかったので、
車を持っているという彼女の同級生の女の子が、占いに興味があるという事で、
一緒に行きたいと名乗り出てくれたそうで、計3人で行く事になった。
まぁ、実際は占い師の所に行くのではなく、霊能者の所に行くのだが、
この同級生の子の様に、占い師も霊能者も同じ類だと思っている人は多い。
日本や香港、台湾だと、占いの館とか、占い専用の店舗で営業する場合が多いが、
アメリカでは、占い師や霊能者の自宅でお客を診る場合が多い。
私の知り合いの霊能者も、平屋の自宅にお客を招いて霊視を行なっていた。
私達は、車を霊能者の自宅に面した道路に停めた。
自宅という事もあるが、別にここが霊能者の事務所ですよ。とか、
霊視やってます。みたいな看板は一切無い。
だから、知らない人が、この家の前を通っても、
ここで霊視の相談を行なっているとは誰も分からないだろう。
これはある意味、お客を守っているとも言える。
例えば、質屋という看板を掲げている家に入っていけば、
それを見た人は、ああ、あの人はお金に困っているのだろうと想像がつく。
しかし、看板を掲げていない家に入っているのなら、普通にお友達かもれないのだ。
さっそく、私が家のベルを鳴らすと、
霊能者の長男さんが出て来てくれ、家の中に入れてくれた。
玄関を入って、すぐ右が霊視を行なっている部屋になっている。
簡単な自己紹介の後、さっそく霊視を行なう事になった。
さっそく、リサさんが、霊能者の目の前の椅子に座り、
私と同級生の女の子は、ちょっと離れた所に座って、静かに見守った。
予約の電話をした段階では、
私は霊能者の方には、
「私の仕事仲間のリサさんが、
最近、愛犬と親友を亡くして落ち込んでいるので、見て欲しい。」
という事しか伝えていなかった。
それ以外は、どんな犬かも、どんな名前なかも言っていない。
やり方は、極簡単な手続きから始まった。
白い紙に、リサさんの本名と生年月日を書くだけだった。
私は何回か立ち合っているが、紙に何も書かないで始まる時もあった。
今日は書いてもらうパターンだった。
霊能者の方は、リサさんが紙に書いている時に、もう霊視に入っている様だった。
リサさんが書き終わってから、5分位経った頃だろうか。
霊能者の方が、
「エイミーという女の子が、来ています。」と言った。
そして、
「エイミーという子が、亡くなった親友ですか?」とリサに聞いた。
「はい。」とリサ。
私はそれを聞いて、「スゲー! 死んだエイミーの名前を言い当てたよ!」
と心の中で叫んでいたのだが、
当の本人であるリサと一緒に来ていた同級生は、エイミーの名前を聞いても、
まったく驚く気配は無かった。
リサは、顔色一つ変えずにただ冷静に「はい。」と答えただけだ。
後で分かったのだが、
私と霊能者の方は、知り合いなので、
エイミーの名前は予め私が霊能者の方に、教えていたんだろうと思っていたという。
つまり、この時点で、すでに驚いているのは、私一人だけだった。
しかし、次に霊能者が言った言葉に、多分一同が気落ちしてしまう。
というのは、霊能者の方が、
「犬の映像が見えます。・・・・・
ラブラドールかしら。」と言ったのである。
霊能者が間違ったのだ!!
亡くなったリサの愛犬は、ゴールデンレトリバーだ!!
ラブラドールではない。
確かにゴールデンレトリバーも、ラブラドールも似ているが、
愛犬家にしてみれば、まったく違うものだ。
しかし、リサさんは冷静だった。
もしかしたら、霊能者の方は、犬の種類を知らないか、
ゴールデンの事をラブラドールと、言い間違いをしたのではないだろうかと思い、
「その犬の毛は、長いですか? 短いですか?」と念の為に聞いてくれたのである。
しかし、霊能者の方は、
「毛は、かなり短いわね。」と言ったのである。
「それじゃ、ラブラドールだ!」一同そう思ったはずだ。
霊能者は何か違う犬を霊視してしまったのである。
それでも霊能者の方は、
「ラブラドールに心当たりは、無いですか?」とリサに聞いてきたので、
リサは、「私の愛犬は、ゴールデンでした。」と残念そうに答えた。
霊能者の方は、「おかしいわね。」と言いながら、
「エイミーという子が、ラブラドールの映像ばかり見せて来るのよ。」
とやや困惑気味だった。
そこで、映像では無く、霊の声を聞く様にアプローチを変えた様である。
やがて、しばらくすると、霊能者の方が、
「エイミーが、ルビーをよろしくお願いします。って言ってるけど分かる?」
しかし、それを聞いてもリサにはピンと来なかった様だった。
そんな高価な宝石は、私は持っていないし、
エイミーがルビーの宝石を持っていたという話も聞いていないと言う。
それでも霊能者いわく、エイミーの霊は、
「ルビーをお願いします。」
「ルビーをよろしくお願いします。」と繰り返すという。
それは、亡くなった親友のエイミーが、いかにルビーの事を伝えたいのかが、
私にも伝わってくるのだが、肝心のリサには思い当る節は無かった様だった。
しかし、霊能者の方が、「ルビーを助けて」とも言ってるわ。
と言った瞬間だった。
リサさんが、「あっ!!」と、大きな声を上げたのである。
「何ですぐに気がつかなかったんだろう。
私、自分の犬の事ばかり考えていて、忘れてたわ。」
「ラブラドールよ!!
ラブラドールだわ!!」
「エイミーの愛犬の名前が、ルビーなの!!」
大の仲良しだったリサとエイミーは、10年前、
同時に犬を飼い始めたという。
二人とも本当は、お揃いでゴールデンを飼いたかったのだが、
エイミーの両親は二人とも、余り犬が好きでは無かったという。
そこで、リサはゴールデンを飼う事になったのだが、
エイミーは、両親の事も考えて、余り毛が飛び散らない様に、
毛が短いラブラドールにしたのである。
霊能者によると、エイミーはリサに、
自分が飼っていたラブラドールのルビーを、
リサに引き取って欲しいと願っているみたいだと告げたのである。
このメッセージは、私を含めリサ達を驚かるに十分だった。
なにしろ、私はエイミーの名前は知っていたが、
エイミーがラブラドールを飼っていて、その名前がルビーだったなど知るよしも無かった。
当然、霊能者の知っていたはずが無い。
つまり、エイミーの霊は、確かにそこに居て、リサに、
自分が飼っていたラブラドールのルビーを、
リサに引き取って、助けて欲しいと願っていたのである。
翌日、私は行かなかったが、
リサと同級生の子が、エイミーの自宅に行ったという。
すると、エイミー亡き後、
余り犬が好きでは無いエイミーのご両親は、犬の世話に困っていて、
誰か貰ってくれる人を探して、タダであげようと相談していたというのだ。
だから、リサが世話を名乗り出ると、喜んでくれたという。
現在、リサがエミリーの愛犬ルビーを、
自分の大切な愛犬として可愛がっている。
なぜなら、あの時、
霊能者に、こう言われたからでもあった。
それは、エイミーの霊が、リサに、
「リサ、ルビーをよろしくお願いしますね。
それからね、
心配しなくて、いいわよ。
貴方の甘えんぼさんの、ゴールデンのチコちゃんは、
こっちで元気になって、今、私が世話しているから大丈夫だからね。
とっても良い子よ。
じゃあね。リサ、愛してる。」
END

