●愛犬と大親友を同時に失くしたリサ

 

 

 


私がアメリカに留学している時、

 

 

学費の一部の足しにと、大学内にある図書館でアルバイトをした。

 

 

当時学生は、希望すれば優先的に大学内の施設で働けた。

 

 

仕事はとても簡単なものだった。

 

 

学生が返却した本を、元有った場所に返す仕事が主だった。

 

 

その時に、2年先輩のリサさんという学生に仕事の仕方を教そわった。

 

 

彼女は自分の苗字が嫌いだと言っていて、

 

 

大学を卒業したら、すぐにでも結婚したいと言っていた。

 

 

そんな彼女の苗字は、Shoemakerというものだった。

 

 

読んで字の如くとは、このことだ。

 

 

先祖が、靴(Shoe)職人だったという。

 

 

そこで、ちなみに、私の苗字Kayaは、どうかと聞いてみると、

 

 

Kayaは、ココナツ・ミルクと卵で作る東南アジアのジャムの事で、イマイチだと言う。

 

 

そんなつまらない話をしてよく笑った。

 

 

 

 

 

 

 


ある日、彼女がドタキャンで仕事を休んだ。

 

 

 

 

電話を受けた人の話によると、愛犬の具合が悪くなり病院に連れて行くという。

 

 

そう言えば、彼女の愛犬の写真も見せてもらった事がある。

 

 

常に持ち歩いていて、溺愛していた。

 

 

14歳のゴールデンで、チコと名付けていた。

 

 

彼女が家に帰って来ると、玄関でお出迎えしてくれて、

 

 

朝も目覚ましが鳴っても起きないと、起こしに来てくれるという。

 

 

 

 

 


2週間後、そのチコが死んだ。

 

 

 

彼女の落ち込みようは、傍から見てもよく分かった。

 

 

私が出来たのは、せめてなるべく彼女の分も仕事をする事ぐらいだった。

 

 

ペットロスには、個人差もあるだろうが、愛犬を失くした者にしか分からない悲しさがある。

 

 

 

愛犬家にとって、犬はただのペットでは無いのだ。

 

 

家族であり、彼女にとっては、愛する兄妹にも匹敵する存在だったという。

 

 

彼女もいつも、チコはとても甘えん坊で、私がいないとダメなの。とよく話していた。

 

 

 

 

1週間経っても、彼女は立ち直れなかった。

 

 

そんな時、彼女に更なる悲しみが襲った。

 

 

彼女の大の親友で、同級生だったエイミーが交通事故で亡くなったのである。

 

 

エイミーは、ゴールデンのチコが病気になった時も、車で病院に連れてってくれたり、

 

 

ペットロスになっていたリサの家に毎日行って、リサを慰めてくれていた人だった。

 

 

そんな親友のエイミーまでもが、彼女の側から居なくなってしまったのだ。

 

 

それから何日か、彼女は大学も仕事も休んだ。

 

 

 


その後、仕事に復帰したリサは、前のリサとは明らかにトーンダウンしていて、

 

 

無口になっていた。

 

 

Are you OK?」と話しかけても、ただ「Yeah」と返事するだけだった。

 

 

 

ちなみに、「Yeah」(ヤー)とは、「Yes」の事だが、

 

 

Yes」より、ややくだけた英語で、日本語で言うなら、

 

 

Yes」が「はい」なら、「Yeah」は「うん」という様な感じだろうか。

 

 

 

 

 


そんな元気の無いリサが、ある日、私に、

 

 

「チコやエイミーは、天国に行ったのかしら?」と聞いて来た。

 

 

私が「きっと天国に行ったよ。」と言っても説得力が無かった様で、

 

 

「そうかしら・・・」とうつむくだけだった。

 

 

 

 


10年間をも共にした愛犬と大親友を、ほぼ同時に失くしたエイミーにとって、

 

 

占い師は、ただの無力の通行人に過ぎなかった。

 

 

例え来月良い事が起きるでしょう。と慰めても、彼女を元気にする事は出来ないだろう。

 

 

それが10年という重みでもある。

 

 

 

 


私は意を決して、彼女にこう提案してみた。

 

 

「私の知り合いに霊能者の女性が居るんだけど、会ってみる?」

 

 

彼女は少し考えてから、

 

 

「NO.・・・・Thank you.」    と答えた。

 

 

 

 

 

 

しかし、

 

 

彼女は家に帰ってから、何か感じるものがあったのか、

 

 

翌日仕事場で会うなり、私に「霊能者の所に行く」と頼んで来たのである。

 

 

 

 


霊能者の方に電話すると、丁度午後から空いていると言うので、

 

 

図書館の仕事が終わったら、一緒に霊能者の所に行く事になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やがて、霊能者の方から、

 

 

予想もつかなかった意外な事を、告げられるのである。

 


後半は、明日のブログに続く。