●怨みを超えるもの
このお話は、一昨日のブログ(●白い服を着た幽霊が出る豪邸)の続きです。
従って、一昨日のブログ(https://ameblo.jp/hirosu/entry-12311679593.html)
を先にお読みください。
そしてから下をお読み下さい。
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[前回までのあらすじ]
ワシントン湖の湖畔にある1つの豪邸から、
白い服を着た幽霊が出るという相談が、霊能者の所に入った事がある。
ただ、霊能者の方からは「今回は少し危険かもしれないよ。」という事を言われた。
霊能者の方いわく、地縛霊が出るかもしれない、高い所や水辺は危険が伴うのだと言う。
依頼者の方いわく、今から5年前、家の敷地内で、女性が銃で殺されたのである。
そして、幽霊はその女性ではないかというのだ。
なぜなら、幽霊が出始めたのが、その女性が殺されてからである事。
そして、幽霊が出るのが、その女性が殺された付近である事。
霊能者の方も、現地へ行く前から、白い服を着て出る幽霊は、
その銃で殺された女性で多分間違い無いだとうという事だった。
つまり、殺された女性の霊が、地縛霊となっていて、
何らかの怨みがあって出て来ていると推測されるのである。
無残にも銃で殺されたという女性の幽霊が出る豪邸へと、私達は向かったのである。
私達が豪邸に着いたのは、10時半頃だった。かなり大きな2階建ての邸である。
ベルを鳴らすと、お手伝いさんらしき年配の女性が取り次いでくれた。
応接間の中から見える景色は最高で、窓一面にワシントン湖が見える。
屋敷の前には、綺麗な芝生が広がっていて、その先にワシントン湖があるのだが、
湖には、プラベートの船とデッキがある。桁違いの金持の家だ。
この大きな屋敷には、お手伝いさんが2人。それに夕食時に来るコックが1人。
昼間に来る庭師が1人いるというのだが、その内お手伝いさん2人と庭師と奥さんの4人、
あと、もう辞めてしまったというお手伝いさん4人の合計8人もの人が、
この屋敷内で、白い服を着て出る女性の幽霊を目撃しているという。
辞めた4人のお手伝いさんは、どうやら幽霊が怖くて辞めたという事だった。
そこで、まず依頼者の方が言う、今から5年前の出来事を聞かせてもらう事にした。
それはある夏の日だったという。日が暮れて、辺りが暗くなった頃だったという。
突然湖岸のデッキ付近から、銃声が鳴り響いたと言う。
あるウェイトレスの女性が、恋人に追いかけられて、なぜかこの屋敷の中に逃げ込んで、
湖岸にあるデッキの所で、その恋人の男に捕まって、銃で殺されたという。
そして、その時に2人の喧嘩を止めに入った、
この屋敷に住む大学生の長男ジョンにも男は発砲したという。
幸いジョンさんは、重傷を負ったものの命は助かったという事件だったという。
つまり、見ず知らずのウェイトレスが、屋敷に逃げ込んだ所を追いかけてきた恋人が、
湖岸のデッキで追いつき、そのウェイトレスを射殺したという。
その時に、巻き添えをくって止めに入った屋敷の御曹司であるジョンが重傷を負ったという。
それ以来この屋敷の敷地内のあちこちで白い服を着て出る女性の幽霊が目撃されるという。
幽霊の目撃情報は、圧倒的に家の外が多かった。これは一体何を意味するのか、
階段を登って2階の部屋に上がった。そこもかなり大きな部屋で、
お手伝いさんが昼間掃除していると窓際に白い服を着た女性が立っていたのだという。
霊能者の方が実際にその目撃された場所に立ってみたのだが特に霊の気配はしないそうだ
そこで私達は庭に出て、湖岸の方へ行って見る事にした。すると、庭に出た瞬間だった。
霊能者の方が「あっ、居るわ。」と言ったのである。湖畔にあるデッキの上に居るという。
「あそこ」と指を差してもらったのだが私も通訳の友人も見えない。
こっちをじっと見ていると言う。ゾクッとした。
私達が湖畔のデッキに到着した時、霊の姿は見られなくなったという。
銃で殺された白い服の女性の霊は、どんな怨みを抱いて現れるのだろうか。
なぜ今もこの豪邸に姿を現すのだろうか。どんな怨みを豪邸の人達に抱いてるのだろうか?
確かに、ここには白い服を着た女性の幽霊が居るという事が確認できた。
霊能者の方いわく昼間だと霊の力も弱く実際にその霊と会話するには、
夜中にならないと出来ないという。
私は夜中になるのを待って、どういう怨みがあって、この屋敷に現われるのか、
この屋敷にどういう怨みがあるのか、霊の直接聞いてみる事になった。
私達は一旦、豪邸内に戻り、奥さんにこれまでの事を説明し、
許しを得て、夜中になるまで待たせてもらう事になった。
私は当然、昼食や夕食はこの豪邸で頂けるものかと思っていたら、
奥さんが、
「それでは、皆さんは、夜中の十二時過ぎにこちらにお見えになるのですね?」
と言うので、私達が「はい。」と答えると、
「では家政婦に対応する様に伝えますので、ご自由に入って来てください。
ところで皆さんは、お昼はどこで食事されるのですか?」と聞いて来た。
上手い聞き方だ。
そう聞かれちゃ、「はい。ここで食事にありつきます。」とは言えない。
霊能者の方が、奥さんに「この辺で食事出来る所はありますか?」と聞くと、
前の道を右にずっと行くと、美味しいレストランがあると教えてくれた。
アメリカのお金持は、意外とケチが人が多かったりする。
だからお金が貯まるとも言えるのだが・・・
私がその話題を車内で振ると、
霊能者の方が、
「まあ、私達は彼らの友人でも知人でも無いし、
それに、こちらが1人ならまだしも、3人で行ったからね。
それに、昼食と夕食の両方になってしまうしね。 これが普通じゃない。」と言う。
日本なら、家の問題を解決する為に霊能者が来たら、
なるべく最善を尽くしてもらいたいから、という気持ちもあって、
多分、お寿司をとったりして御もてなしする所だろうが、
さすがアメリカ。こんな所にもビジネスライクな一面を感じた瞬間でもあった。
私達は昼食と夕食をとりながら、時間を潰し、
夜中の12時半に、豪邸に戻った。
豪邸に戻ると、ベルは鳴らさず、お手伝いさんの部屋をノックして開けてもらった。
その様に指示されていたのだ。
私達はなるべく静かに階段を登り、家の中で唯一幽霊が目撃された
赤○がしてある部屋で、待機する事にした。
これは霊能者の方の提案で、ここから湖畔の方を見て待ちましょうという事だった。
多分であるが、この時点で霊能者の方は、何かを感じていたのではないだろうか。
霊能者の方が、静かにじっと湖畔の方を見ているので、
私も黙って、同じ様にじっと湖畔の方を見つめていた。
異様な時間帯である。
私達3人とお手伝いさんを含めた4人が、
明かりも点けずに、暗い部屋の中で、じっと湖畔の方を見ているのである。
どの位経っただろうか。30分は経ったいただろう。
話に寄れば、この部屋の窓際に白い服を着た女性の幽霊が出たという。
私はいつここに、幽霊がフッと現れるかと、ドキドキしていた。
その時だった。
この部屋と湖畔の間にある芝生の所が、一瞬光ったのである。
丁度上の写真の窓の延長上にある芝生の上の赤○の部分辺りだった。
その一瞬光ったのを見た霊能者が、
「じゃあ、行きましょう。」と立ち上がったのである。
その光は、まるで、幽霊が現れましたよ。という合図の様に感じた。
私達は霊能者の後について、湖畔の方へと向かった。
霊能者の方は、どんどん足早に湖畔に向って歩いて行く。
私達は彼女に追いつくのがやっとだった。
霊能者は、湖畔にかかったデッキの前で止まった。
そして、デッキの上の辺りをじっと見つめたまま、動かなくなった。
どうやら霊と会話している様だった。
どの位そういう状態が続いただろうか。10分位だろうか。
急に霊能者の方が、私達にも分かる様に声を出して、
「光が見える?」と霊に話しかけた。
どうやら霊を天国に導いている様だった。
そして、霊能者の方が、こちらを向いて、
「行ってしまったわ。」と言った。
そこで通訳の人が、霊はなんて言ってましたか?と聞くと、
霊能者の方は、霊が話してくれたという内容を私達に話してくれた。
しかし、その内容は衝撃的なものだった。
まず、霊能者の方が、霊に「なんで、ここに毎回現れるの?」と聞くと、
白い服の霊は、愛するジョンとの思い出に会いに来てるの。と言ったという。
ジョンのご両親には反対されていたけど、ジョンは私を愛してくれたの。
私はここに来ると、いつも芝生の所から懐中電灯でジョンに合図したの。
そして二人はここにあったボートの中で、愛し合ったのよ。
大学を卒業したら、結婚してくれるって。
それまでの私はウェイトレスをしていて、暴力的な恋人に支配されていて、
夢も希望も無かったの。
でも、そんな私の人生をジョンは救ってくれたの。
夢の様だったわ。
でも、何度も別れたいと言っても、恋人はどうしても別れてくれなくて、
ある日、私を付けてきたの。そして、銃で殺されてしまったの。
でも、このデッキに来ると、またあの時に帰った様な気持ちになるの。
ジョンとの夢の様な時間に戻れる様な気持ちになるの。
そう言ったというのだ。
なんと、
殺されたウェイトレスとこの豪邸の御曹司ジョンは、恋人同士だったのである。
昼間の奥さんの話では、ウェイトレスが恋人に殺されて、止めに入った息子さんのジョンが、
巻き添えを食って撃たれて重傷を負ったという事だったが、
実際は、ジョンとウェイトレスが一緒に居る所を、
ウェイトレスを付けて来た元恋人によって、二人とも銃で襲撃されてしまったのである。
まず通常は、霊は嘘をつかないという。から、それが事実だろう。
今から考えてみると、奥さんの説明にも不自然な所が多々あった。
大体、辺りが真っ暗になった湖畔で見ず知らずの人達が喧嘩していたとしても、
御曹司である息子さん一人で、その見ず知らずの人達の喧嘩の仲裁に入るはずがない。
警察を呼ぶなり、使用人に見に行かせるなりするだろう。
それに、見ず知らずのウェイトレスが、
この豪邸の私有地に勝手に入れているのも不自然だ。
ああ、なんでもっと早く気がつかなかったのだろう。
冷静に考えれば、ジョンとウェイトレスが恋仲だったと予想できたかもしれない。
霊能者の方いわく、
世間体からか、依頼者が事実を多少曲げて言う事はたまにある事だという。
私はこの事件を通して、1つ大きな事を学んだ。
それは、今まで私は、
殺された人が、幽霊になって出る時、
それは自分が殺された怨みや無念から、現れているのだという先入観があった。
しかし、霊によっては、
怨みや復讐の気持ちを、超えるものがあったのだ。
それは、愛や楽しい思い出なのである。
自分を殺した元恋人への怨みよりも、
自分を愛してくれた人に会いたいという気持ちが上回る事もあるのである。
その後、霊能者の説得で、
ウェイトレスの霊は、天国の光の中へと進んで行ったという。
「今度生まれ変わって来たら、
ジョンの様な人と一緒になって、可愛い奥さんになるのよ。いいわね。」
END
