正法眼蔵随聞記第一(一五) 一五 示して云く、人は思ひ切て命をも棄て、身肉手足をも截《きる》ことは、中々せらるゝなり。然あれば世間の事を思ふに、名利執心の為にも多くかくの如く思ひ切なり。只依り来る時に事に触れ物に随て心品《しんぽん》を調《ととの》ふること難きなり。学者身命を捨ると思ふて且《しばら》くおしゝづめて、云ふべきことをも修すべきことをも、道理に順ずるか順ぜざるかと案じて、道理に順ぜば云ひ若《もしく》は行じもすべきなり。