「佑ちゃんとマー君のツーショットのフォトセッションを作ってくれませんか」と日本ハム担当のメディアから連絡があったのが、試合2日前のこと。私自身、「周りの選手にも迷惑がかかるし、危ないし、それに本人たちも気を使うだろうから、あえてフォトセッションなどやらない方がいいんじゃないか」と思っていました。とりあえず「外野とかサブグラウンドでアップをしている時に、同じ場所にいれば自然と話すだろうから、その時に所定の取材エリアから撮ればいかがですか」と対応しました。
ところが、どうしてもツーショットの画がほしいのか、それでは納得してもらえず、「日本中がそれを見たいから」「みんなが期待しているから」と、何とかして約束を取り付けようとする。それでも私は「他の選手のこともあるので……」と、首をタテに振りませんでした。
そしたら今度は日本ハムの広報にお願いされたようで、翌日、日本ハムの広報の方から同じような内容の連絡がきました。報道陣の“ガス抜き”にもなるからとも言われましたが、やはりフォトセッションは危険すぎるということで、お断りさせていただきました。
ただ、「うちは球場に着いたら投手陣はサブか外野でアップをすると思うので、そこでタイミングが合えば自然と話すでしょうし、報道陣に近いところで絡むと危険なので、グラウンド内で自然発生的にやるのがいいのではないでしょうか。まだオープン戦ですし、別に無理して作らなくていいと思います。田中本人にはベンチ前とかベンチ裏の通路とか狭い場所で、報道陣が近くにいるところで斎藤君と絡むと大混乱になり、周りの人に迷惑がかかるので、そういうところで絶対に絡まないようにと注意しておきます」とだけ言いました。
結果は予想通り、外野でアップ中にふたりは笑顔で近づき、握手をして、会話を交わしていました。それを各社が外野スタンドやファールゾーンから撮影。この件に関して、斎藤選手を田中選手のところまで連れて行ったダルビッシュ投手が「広報がうるさく言うんで」とコメントをしたように、かなり気を使ったことは容易に想像がつきます。
試合後に、日本ハム担当のメディアの人たちから「いい画が撮れました。ありがとうございます」と言われましたが、実際、私は何もしていません。もしツーショットのフォトセッションをセッティングして、囲み会見などをやっていたら……。
ちなみにこの件に関して、楽天担当のメディアからは何も要求はありませんでした。その背景には、田中選手が入団した頃から斎藤選手関連の質問が多く、どんな些細な一言でも強引に結びつけられて番組や記事を作られたことに田中選手がうんざりしていたのを知っているので、担当記者たちが気を使ったみたいです。誤解がないように念のため書いておきますが、田中選手と斎藤選手は個人的には仲がいいんです。
でもこの感覚、なんか懐かしいなと思っていたら、4年前に楽天でも同じようなことが……。そうです、田中選手が入団した時にも同じようなことがあったんです。報道陣の数もすごかったですし、要望もたくさんありました。
ある程度、メディアの要望につきあうことも大事ですが、それが必ずしも本人たちの気持ちや世の中のニーズと合っているわけではありません。メディアのペースに巻き込まれたり、流されたりせず、自分の考えや信念をもとに、自分の土俵で仕事をすることの大切さを改めて考えさせられた一件でした。
そして最後にもうひとつ。斎藤選手と田中選手のふたりの接触にメディアが熱狂していた直後のことです。外野でキャッチボールをしている岩隈久志選手にダルビッシュ選手が歩み寄っていき、談笑がスタート。その後、ふたりは球場を出てファンの間を歩いてブルペンの方へ向かって行きました。それまで騒いでいたファンもふたりのオーラに圧倒されたのか、「ワァー」とも「キャー」とも言わず、ただただ通り過ぎるのを黙って見つめていました。次の日の新聞に一切そのことが載っていなかったのが残念でした。
岩越亮(楽天イーグルス広報)●文 text by Iwakoshi Ryo
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20110303-00000301-sportiva-base