14、責任とは(7)
文麿が登校する日がやってきた。
文麿は勉強する為ではなく、退学届を提出しにやってきたのであった。
退学して働いて、そしてそのお金で由香子への償いをするつもりでいた。
文麿が正門を入ったその時、校舎の屋上から大きな垂れ幕が下へと落ちていった。
その垂れ幕に『野球部 半年間 対外試合 自粛決定』と書かれていた。
「なんだと!」文麿はその垂れ幕を見て驚いた。
そして、正門で待ち構えていた野球部員は文麿の前に立ちはだかった。
陽一が前に出て「一ノ瀬、春まで対外試合自粛に決まった。連盟にはこれで顔が立つらしい。だから野球部に帰って来い」と言った。
「徳永、俺は学校を辞める。だからそんな事するな。選抜狙えよ」
「みんながいたから勝てたんだ。誰一人欠けても、ここまで来れなかった。だから誰一人辞めさせない」
「徳永、俺はもう決めたんだ」
文麿はもう決心がついていた。
すると今度は真が「じゃあ学校辞めて何するんだよ」と文麿に尋ねた。
文麿は「由香子を半身不随にさせた事を償う。その為にお金を稼ぐ」と眉を吊り上げ、自分の決意を述べた。
その言葉を聞いた真は、校門の裏に向かって「おい!由香子」と言った。
すると恵に車椅子を押された、由香子がやってきた。
「由香子!」
「一ノ瀬・・・辞めないで。私、この体でも頑張って生きていく・・・だから辞めないで」
「由香子・・・」文麿の目から涙が落ちた。
由香子も涙を流して「大丈夫、これでもなんとか生きていく。だから・・・だから・・・お願い辞めないで・・・辞めないで・・・」と何度も言った。
文麿も「由香子・・・ごめん・・・本当にごめん」と言って、溢れんばかりの涙を流した。
これで由香子への償いが解決したわけではない。
しかし文麿はその明るい性格で、これからも由香子を元気にしてくれるだろう。
償いとは決してお金だけではなく、それだって立派な償いである。
いや、その償いが一番難しい事なのだ。
頑張れ文麿。
そして頑張れ由香子。
そして陽一には最後の仕事が残っていた。
それは、これまで散々騒ぎ立てたマスコミに対しての説明であった。
校長がいくら言っても、次々とアラ探しばかりするマスコミに、陽一は自分の口から説明したいと、校長先生へ願い出た。
そしてその日の夕方、体育館で一連の騒動に関する記者会見が開かれた。
恵は、これから記者会見に向かおうとする陽一を心配し「陽一、大丈夫?」と声を掛けた。
すると陽一は小さくうなずいて「恵、今週の日曜日富士急ハイランドに行こうぜ」と言って笑うと、校長先生と一緒に体育館へと向かって行った。
恵はそんな陽一に安心したのか、少しだけ笑った。
待ち構えていた報道陣は、校長だけでなく、陽一までやってきた事に驚いた。
そして、校長と陽一は、報道陣の前で頭を下げた。
まず校長先生から話し出した「え~、この度当校が世間を大変お騒がせ致しました事を心より深くお詫び申し上げます」そして校長先生と陽一は再度深く頭を下げた。
「え~、当校の野球部部員は、先月の初めオートバイ事故を発生させ、それにより当校の女生徒が怪我をし、その影響により後遺症が残ってしまった事は、間違いのない事実であります。当校はオートバイを校則で禁止しており、それに基づきその当事者を2週間の停学処分といたしました。そして今後このような事が二度と起こらないよう、対策を施した次第でございます。対策と致しましては、皆様にこれから配布する資料を参照とさせていただきたく思います」
すると仁科先生が、各報道陣に再発防止対策の書類を配りだした。
そして校長は話を続けた。
「そして高校野球連盟からの処分でございますが、連盟としては法を犯したわけではない為、罰則は無いものの、自主的に世間様に納得のいくようにと、ご指導がございました。よって今後の野球部の方針を、ここにいる新主将の徳永陽一君に説明をしてもらいます。徳永君お願いします」
校長がそう言うと、陽一はポケットから原稿用紙を取り出し、報道陣に説明を始めた。
そして陽一にフラッシュが容赦なくたかれた。
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