18、ドラフト会議(2)
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時同じくして陽一は、品川区にあるロサンゼルス・ドジャースの日本事務所を訪ねた。
事務所に着くと、陽一は応接室へと通された。
そして応接室には、ドジャースグッズが沢山並べられ、往年の名選手の写真が沢山飾られてあった。
まさに陽一にとって夢の世界であった。
ドジャーブルーのユニフォームをこの自分が着るのである。
しばらくすると、シマノマネージャーが応接室に入ってきた。
サングラスに髭を生やしたシマノは、日本人には無い雰囲気を出していた。
「そうか、ドジャースに来てくれるのか」
「はい、ドジャースのユニフォームを着て、頑張りたいと思います」
「うん、しかし君は甲子園のスターと言えども、ルーキーには変わりないし、アメリカ国民も君の活躍を知らない。はっきり言って全くのゼロからのスタートとなる。覚悟は出来ているか?」
「はい、自分もゼロから始めるつもりで、今日ここに来ました」
「わかった・・・徳永君、頑張ってくれ。期待しているよ」
「はい、頑張ります」
そう言うと、二人は固く握手を交わした。
陽一は、遂にロサンゼルス・ドジャースの入団を決意したのだ。
11月に入ったが、阪神タイガースの社内は、今だに誰を指名するか結論が出なかった。
阪神タイガースの若林部長が、社内で完全に孤立をしながらも、真を指名すると言って一歩も引き下がらなかったからだ。
スカウト部としては、若林部長の鶴の一声で遠山指名に決まった。
しかし、他の部所の取締役は、それを許さなかった。
球団と言うものは、強さだけを求めるものではない。
人気というものも必要なのだ。
つまり人気による、業績というものである
甲子園のスター陽一を指名すれば、莫大なスポンサー収入が入り、財務系の人間としてはとても助かる話である。
そして広報部としてもやりやすい。
営業部としてもやりやすい。
グッズも売れるし、年間シートも売れるであろう。
しかし、真を入団させたところで、陽一ほどの経済効果が望めないのだ。
真の指名は、あくまでゲーム戦略上の話であり、広報部や財務部にすれば、どうしても甲子園のスーパースター陽一を獲得したいのだ。
阪神タイガースの緊急役員会は大いに揺れていた
「若林さん、遠山でどれだけの集客が見込めるんですか?どれだけのスポンサー収入が見込めるんですか?」財務部長はいきなり若林部長に食って掛かった。
しかし若林部長は一歩も引かない。
「あんた方は、一年の業績だけしか考えとらん。強さというものが、人気の基礎なんや。金本もおらんくなった今、チームとしては、彼の後任の4番打者が必要なんや。今のウチのチームには、これから10年20年と働いてくれる4番打者が必要なんや」
「その4番が、遠山なんですか?」広報部長も食って掛かった。
「その通り」
「なんで遠山なんて選手を1位指名でとるんですか?5位や6位じゃあかんのですか?それでも十分獲得できるでしょう」営業部長も食ってかかった。
「未来の看板選手を1位でとるのは当然や」
「もし失敗に終わったらどうするんですか?」
「その時は私が責任をとる」
そんな言い合いをしながら、刻々と時間は過ぎていった
すると一名のスタッフが、会議室の中へ慌てふためいた表情で入ってきた。
「大変です!徳永はプロ入りをしません!メジャーに行きます」
「なんやと!」
「プロ志望届けを出さないそうです」
会議室は突然の一報に騒然となった。
会議室はひたすら沈黙が続いた。
時刻は夜中の一時。
その時、いままでずっと沈黙を守っていた球団社長が遂に口を開いた。
「どうや?ここは若林君にかけて見ようやなないか」
まさしく鶴の一声であった。
「社長!」若林部長は、嬉しさのあまりに、席を立ち上がった。
「若林君の選手を見る目は確かや。若林君がそこまで言うとるんやから、失敗はないやろ」
若林部長は「おおきに!」と言って、球団社長に深く頭を下げた。
こうして阪神タイガースは真を指名する事となった。
それと時同じくして、日ハムやソフトバンクも陽一の指名を諦めた。
翌日のスポーツ新聞各紙は、一面に陽一を載せた。
『徳永 ドジャース入り決定』
『18歳のチャレンジ! ドジャース徳永』
『若きメジャーリーガー 頑張れ陽一』
そしてその事は、朝からテレビのニュースでも大々的に取り上げられた。