フォーエバー・フレンズ -216ページ目

20、それぞれの道(2)

そして卒業式目前の二人は旅に出た。

新幹線で富士山を眺め、それから浜名湖も眺めた。

恵にとって新幹線に乗るのは初めての事だった。

「陽一、お弁当作ってきたから食べて」

恵はそう言うと、陽一に弁当を渡した。

「旅行の時ぐらい、料理は休めよ」

「いいの。料理は私の趣味だし、これからの仕事だし。それに陽一に食べてもらいたい」そう言うと、恵は陽一の顔を見て笑った。

そして二人は、新幹線の車窓の浜名湖を見ながらお弁当を食べた。

「陽一、美味しい?」

「うん、美味いよ」



JR下呂駅前に湧き出る温泉 - 写真素材
(c) Shimizu00ストックフォト PIXTA


下呂にやってくると、二人は旅館に荷物を置いて、早速街の散策にくり出した。

すると古き情緒ある温泉街が、二人を出迎えた。

「陽一、コロッケ食べようよ」

恵はコロッケを一つだけ買って、陽一と一緒に街を歩きながら食べた。

そして飛騨川の河川敷へとやってきた。

すると川向こうからいくつもの湯煙が立ちこめていた。

「わあ、すごい。来てよかった」恵は、何年かぶりの旅行に胸を躍らせた。

「でもちょっとまだ寒かったな」

「寒くてもいいじゃん。温泉なんだから」

「まあそうなんだけどな」

「あっ!あそこにみたらし団子売ってるよ。ねえ陽一、食べようよ」

「恵、食べてばっかりだな」

「陽一と違って、普段あんまり食べないから大丈夫」そう言うと恵はみたらし団子のお店まで走っていった。



薄暗くなった下呂の町に、射的場があった。

陽一は、おもちゃの鉄砲を持ちながら景品を狙い撃ちした。

そしてなんとオセロゲームをゲットした。

「恵、夜はこれやって遊ぼうぜ」

「いいよ、私、オセロ強いよ」

「本当かよ」

「本当だよ。淳紀に負けた事ないもん」



旅館に戻ると、恵は温泉に浸かった。

そして、湯煙が立ち込める天井を見つめた。

「はあ・・・温泉っていいんだなあ・・・また来たいなあ・・・」

でも今度はいつ来れるのかと思うと、ふと陽一のアメリカ行きの事を思い出した。

陽一と復縁した時から、ずっとその事は考えないようにしていた。

そしてなるべく明るく振舞っていた。

今日一日を、陽一と楽しく生きようと考えていた。

でも、陽一があと半月でいなくなると考えると、涙が込み上げてきた。

そして「陽一・・・陽一・・・」と思わず陽一の名前を言って、誰もいない静かな温泉に浸かりながら、恵はシクシクと泣いた。



次の日、二人は電車で飛騨高山へと向かった。

そして乗鞍ロープウェイに二人して乗り、まだ雪の残る雄大な乗鞍岳を見た。

「凄い景色だね」

「ほんとだな」

二人は乗鞍の大自然の景色に、圧倒された。

「ねえ、本当に来てよかったね」

「ああ、でもなんかサスペンスドラマみたいだな。『乗鞍ロープウェイ連続殺人事件』とか言ってさ『二人に訪れた死の卒業旅行』って感じで」

「あはは、馬鹿みたい。陽一つまんない」



その日は高山の旅館に泊まった。

そして次の日、陽一と恵は飛騨高山の古い町並みを見ながら手を繋いで歩いた。

春の高山は、まるで日本人の故郷を思わせる光景である。

「あっと言う間だったね」

「もっといたいよな」

卒業旅行が終わりに近づくと、二人は少し寂しい気持ちになった。

「でも本当に楽しかった。陽一と一緒に旅行に来れて本当によかった」

「喜んでくれてよかったよ」

「ありがとう。最高の思い出になった」

そして二人は特急列車に乗って、帰っていった。

特急列車の中、旅の疲れで二人は身を寄せ合うようにして眠った。