こんにちは ひろみんです
介護について考える機会があったので、長女が中学1年生の夏休みの宿題で書いた作文を掲載します。
人権作文を書くというテーマで、今から4年前の作文です。
『一人の人として』
私の祖母はアルツハイマー型の認知症です。アルツハイマー型とは脳の神経細胞が脱落し記憶障害を起こす病気で、認知症のなかでアルツハイマー型が占める割合は全体の約半数です。
祖母は私が生まれた頃60歳前だったため若年性認知症と診断されました。若年性認知症は細胞がまだ若いので進行が早いのが特徴です。
祖母は真冬にコートも着ず夏の服装で買い物に出てしまう事や、帰る道がわからなくなり迷子になってしまう事、車道の真ん中を歩いてしまったりするので私達はいつも心配していました。私が4歳の頃妹が生まれて祖父が亡くなった事もあり、祖母は施設に入ることになりました。
入った当初はまだ元気でゲームをしたり歌ったりする事が出来ましたが、それも徐々に出来なくなりました。祖母が日に日にいろいろな事が出来なくなっていく姿を見るのは、とても辛く悲しい事です。祖母は自分が何かを分かっていないという事実だけを理解してしまい、いつも『わからないの』と繰り返し言っていました。本人が一番辛く苦しいのだと思います。
今では一人で食事を摂る事も出来なくなってしまったので、母が毎日食事の手伝いに行っています。
元気だった頃の祖母はとても優しい人で、この先病気が進行して大切な人の事を忘れてしまいみんなが悲しむ事を一番恐れていました。だから絶対忘れたくない家族の名前を毎日何度も言い続けていました。家族みんなの名前を覚えている事は出来ませんでしたが、私と妹の名前だけは今でも覚えていてくれています。それは祖母の愛だと思います。
母は祖母が認知症だという事を隠す事はしません。家族だけでサポートするのは本当に大変な事なので、隠す事よりも周りの人に知ってもらう事で、祖母をサポートしてもらいたいからです。
認知症にはどう接したら良いかや、行政が行っているサポートはどんなものか。それぞれ専門の知識を得る事が出来るし、近所の人も認知症だと知っていれば声をかけてくれたり、優しく接してくれるので祖母も安心して外に出られたのだと思います。
今でもたくさんの人が祖母をサポートしてくれています。
『本当に困った時は必ず助けてもらえるから大丈夫』と母は言います。
しかし困っている事を自分から発信しなければ周りの人は助けたくても気づく事すら出来ません。
困っていて苦しい時は、一人で抱え込まずに自分は今困っていると言う事が大切だと思います。
祖母の住む地域では行政の認知症に対するとても良い取り組みがあります。一人暮らしの時の祖母は週に2回ヘルパーさんが家に来てくれていました。ヘルパーさんが来た時インターホンを鳴らしても出ないと祖母が家にいないとわかり、すぐに母に連絡が入ります。母が警察に捜索願の電話をすると捜索のネットワークがあり、介護施設・コンビニ・郵便局・商店といろいろな所に、迷子になった祖母の特徴が一斉にファックスで伝えられて、すぐにたくさんの人が探してくれました。そのため早く祖母を保護する事が出来ました。
心配で不安な中、家族や限られた人だけで探すよりも、心強くて素晴らしいシステムがある事を知り驚きました。まだ私が知らないだけできっとたくさんの取り組みや工夫があるのでしょう。
祖母や認知症に限らずどんな病気や障害のある人でも、本人や家族は大変で苦しいと思います。しかしそんな苦労も知らず、差別をしたりバカにしたりする人が世の中にはいます。私はこういう人を見る度に心が痛みます。でもそういう人は知らないだけで、きっと大切な人が病気になったり、身近に障害のある人と出会えば、そこで気付くと思います。また周りにそう言う人がいなくても、想像力を働かせれば思いやりを持って行動する事ができると思います。しかしそれは共に悲しむといった同情する事ではありません。どんな人に対しても一人の人として接していく事が大切だと私は思います。
将来、認知症が画期的に治る薬が開発されるかもしれません。それは本人にとっても家族にとっても嬉しい事ですが、薬や化学の進歩だけに頼るのではなく、私達にも出来る事があると思います。
それは病気や障害のある人、また容姿や性格も人それぞれで、それはその人の個性として受け入れていく事です。
そうする事でいじめや差別もなくなり、みんなが安心して暮らせる世の中になると思います。その小さな平和がいずれ日本の平和、さらには世界の平和につながるのではないでしょうか。そんな世の中になったら良いと私は願っています。
私は祖母のお陰で大切な事に気付き学ぶ事ができました。この経験を生かして誰に対しても尊敬と尊重の心を持ち、自分に何が出来るのかを考え行動していきたいと思います。
お読みいただきありがとうございました。
ステキないまをお過ごしください。