年越しに読む本 | 動的平衡

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同情するならアメをくれ!

 

年末になると使いたくなる言葉。

“鏡の国のアリス”の赤の女王は言ってます。

「同じ場所にとどまるためには、絶えず全力で走っていなければならない」

 

ヘビは脱皮を繰り返すことで、元の姿を維持します。

ニーチェは、「脱皮できないヘビは滅びる」と。

 

そろそろ現状維持のため走り続け、脱皮し続けることに疲れる。

「足掻くことを止めてしまおうか」と考える年代に差し掛かったのか。

 

〈変えられない過去〉と〈変えることができるかもしれない未来〉。

その狭間にある〈いま〉。

時間が不可逆である以上、何か出来るとすれば〈いま〉。

 

そんなことを考えるといつも思い出すのが、大好きな朝倉未来の言葉。

何の疑いもなく天真爛漫に言い放ちます。

 

  「過去なんて変えれますからね、未来次第で!」

 

救われます。

もう少し頑張ろうかな。

 

閑話休題。

積み残した本をやっと読み終えたと思ったら

新たに並行して読みかけている本が溜まっていた。

会社の押し入れの15冊…。

年末年始に読むには足りるかも。

書評は書かないし、書けない。

 

 

『Q』 呉勝浩

佐藤究『テスカトリポカ』以来の興奮。

無駄な文章はなく、駒のような登場人物もいない。

読みながら心拍数が上がる。

悪を倒すとさらに強大な巨悪が現れる。

「すべてをなかったことにする」ための闘いが延々と続く。

暴力、性、生存、正義、愛。

すべてごった煮のパンク。

次の次の直木賞がこれでなかったら選考委員は腰抜けだ。

(注:だからと言って誰にでもお勧めできる本ではない)

 

『School girl』 九段理江

次の芥川賞候補作家で初見。

太宰治『女生徒』へのオマージュ。

『School girl』とは1mmも関係ないが

何日か前に読んだ新聞のコラムから抜粋。

 

 太宰治と檀一雄の交遊に若気の至りがある。熱海の宿で代金が払えなくなり

 太宰が東京に金を借りに帰り、檀が人質として残った。

 ところが、何日たっても戻らない。

 檀が太宰を見つけたとき、井伏鱒二の家でのんきに将棋をさしていた。

 「何だ、君、あんまりじゃないか」。どなる檀にこう返した。

 「待つ身が 辛いかね、待たせる身が辛いかね」。

 戻らないメロスである。

 この3年半後、太宰は「走れメロス」を 上梓する。

 

「待つ身が 辛いかね、待たせる身が辛いかね」

どの口が言うw

平気でこんなことを宣えるから太宰治は大好きだ!

 

『小林秀雄の謎を解く 「考えるヒント」の精神史』 苅部直 

ボクと同じ世代に大学受験をした世代にとって

いつも頭を悩ませたのが小林秀雄。

理解できないこちらがバカなのか

理解できるように書けない作者がバカなのか。

この歳になって読み返すと、存外面白かったりする。

 

『木挽町のあだ討ち』 永井紗耶子

前回の直木賞の読み残し。

時代物とミステリの融合は数あれど

これは本物だ(たぶん)。

 

『破れ星、燃えた』 倉本聰

好きな脚本家は山田太一、市川森一と倉本聰。

山田太一も最近泉下の客となり健在なのは倉本聰のみ。

弊社《夢屋》の由来は、ジョージ秋山原作・倉本聰脚本の『浮浪雲』。

雲さんが頭を務める品川宿の問屋《夢屋》から。

 

『此の世の果ての殺人』 荒木あかね

『ちぎれた鎖と光の切れ端』 荒木あかね

『此の世の~』は江戸川乱歩賞受賞作。

もたもたしてる間に受賞第一作『ちぎれた鎖~』が出てしまった。

どちらも途中…。

 

『私雨邸の殺人に関するい各人の視点』 渡辺優

処女作『ラメルノエリキサ』以来の渡辺優。

知らない内に随分と手練れの域。

ほぼクローズドサークルの鉱脈など掘り尽くされたと思っていた。

マジか。

この手があったか。

 

『世界の家の窓から』 Barbara Duriau

ここではない何処か。

次は何処へ行こうか。

 

以下、省略。

『君が手にするはずだった黄金について』 小川哲

『やっぱり英語をやりたい!』 鳥飼玖美子

『ポストスライムの舟』 津村記久子

『ガラスの橋』 ロバート・アーサー

『生命科学者たちのむこうみずな日常と華麗な研究』 中野徹

『超短編!大どんでん返し Special』 小学館文庫編集部