『進撃の巨人』の世界では、マーレ編が始まるまで、壁の中の人々は、理由もわからないまま圧倒的な力を持つ巨人に命を脅かされる被害者に見えます。

私はがっつり壁内人類の気持ちで『進撃の巨人』を鑑賞してきました。

 

マーレ編で初めて、ライナーたちマーレで育ったエルディア人の環境を知ることになります。

自分が何か悪いことをやったわけでもないのに「悪魔の末裔」として虐げられる人々。

滅茶苦茶、気が滅入る…

初登場当時のガビが、パラディ島の住民を憎んでいたのも納得です。

これは、ライナーたち、パラディ島へ送られた少年兵士たちも似たようなものでしょう。

ライナー以外の戦士たちが、パラディ島住民に対して、憎悪をむき出しにしていなかったのが意外なくらいです。

彼らは虐げられ、洗脳された気の毒な子供たち。

これに異存はございません。

 

それでも、私はライナーやアニ、ベルトルトに共感することはできない。

彼らが最初に、シガンシナを攻撃したときは、選択の余地はなかったのだと思います。

しかし、壁内で開拓民として2年過ごし、訓練兵団で同年代の人々と3年を過ごしました。

壁内人類が自分たちと変わらない、単なる市民だと実感しています。

ライナーたちには、絶対的な力と知識があった。

易々とは殺されないだけの力があり、壁内人類が知りえない情報を持っていた。

それでも、立ち止まることなくマーレの教えに従って、壁内人類の抹殺を選んだ。

 

ガビとファルコは、自分の故郷をパラディ島の兵士に突然攻撃され、大事な人たちを失った。

これは、エレンたちパラディ島の市民と同じです。

そして、復讐の思いに駆られて、飛行艇に飛び乗ったのがガビ。

ファルコは、事前にライナーとエレンの会話を聞いて、なぜ、今パラディ島勢力が攻撃してきたのかを理解しているけれど、ガビを守りたい一心で飛行艇に突入します。

この時の彼らの年齢は、ライナーたちがパラディ島に潜入したときと、ほぼ同じ。

 

狂気に駆られていたようなガビですら、1か月の経験で「この島に悪魔はいなかった。ただ、人がいるだけ」という心境にたどり着きました。

私は、外国籍の人が多数派の環境で働いたことがあります。

その時、日本人に対する差別的な発言も耳にしました。

私自身へ差別発言が向けられることはありませんでしたが、親しくしていた周りの人が差別発言を諫めることもなかった。

彼らは、日本人を擁護するような発言をすると、彼らのコミュニティー内で社会的に抹殺されるリスクがあるから。

ここで、同じように黙ったのが、ライナーたち。

まあ、これが普通なのかも。

そんな意見を制止すべきだという心境にたどり着いたのが、ガビとファルコであると感じます。

 

ライナーとジャン&コニー達の違いについては↓で書いています。

 

 

 

ライナーたちには、マーレで受けた洗脳教育から脱する機会があったし、パラディ島が置かれている状況も分かっていた。

パラディ島の兵士たちにはなかった選択の機会を、ライナーたちは持っていて、その上で同期の兵士もいる調査兵団を攻撃することを選んだ。

もちろん、これは物語の進行上、そうするしかなかった訳ですが、エレンのいうところの「自分で自分の背中を押した奴」です。

だから、進んだ先に待つのが地獄でも、自業自得に思ってしまいます。

 

私、ライナーに対して滅茶苦茶キビシイですね^^;