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警察への糾弾のその先

(C)2008 Universal Studios. ALL RIGHTS RESERVED

チェンジリング


1928年、シングルマザーのクリスティン(アンジェリーナ・ジョリー)が仕事から家に帰ると一人息子のウォルターはいなかった。警察に捜査を依頼した2週間後、見つかったと報告を受け駅へ迎えに行くと、そこには見知らぬ子がいた。ウォルターじゃないというクリスティンの訴えを警察は取り合おうとせず、気が動転しているからだと決めつけ、強引に解決を図ろうとする。教会で警察の腐敗を訴え続けていたブリーグレブ牧師(ジョン・マルコヴィッチ)は事態を知りクリスティンを訪ねる。


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イーストウッドの実話作品を再見。何が怖いって、少年を狙った異常殺人もそうだけど組織ぐるみで嘘をつく警察だよね。いや、それ以上に物語のパーツを現代に置き換えても成立してしまう…今でも80年以上前と似た事件は起こりうる、というのがね。


牧師の行動が当時のロス市警の悪評ぶりを伝える。いまだ人種差別でしばしば問題にされるのだからどうしたものか。一方、物語の主人公クリスティンは息子探しに終始。クリスティンの視点が警察の腐敗を客観視させるフィルターとなっている。


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寄ってたかって否定する警察の圧。「おかしいのは私?」と屈してもおかしくない状況でもクリスティンは揺るがない。「あの子はウォルターじゃない。ウォルターを探して」…彼女の想いは警察腐敗に対する糾弾ではない。終始息子探しなのである。


クリスティンの視点がブレてないからこそ、警察への糾弾は前進する。クリスティンと牧師のバディ、同じ方向を向いているようで実は平行線。クライマックスで痛快な逆転劇となるのだが、クリスティンの戦いはまだ終わってはいない。


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主人公を演じたアンジー、アクションもなく地味なキャラクター。アンジーのキャリア最高の演技ではなかったか。主人公をサポートする牧師役がマルコヴィッチ。マルコヴィッチの変人でも悪人でもない役って、なんかソワソワする(笑)


殺人犯ノースコット(ジェイソン・バトラー・ハーナー)から「何人か逃げた」ことに希望を抱くクリスティンで幕を下ろす。現代でも起こり得ると書いた。が、DNA鑑定で遺体の身元が判明する現代だと、だいぶ展開は違うかな。


ウォルターが見つかったという事実はないらしい。DNAで答えが出てしまうがとりあえず先に進める現代とわからずにいつまでも希望を引きずる当時。どちらが良いのかは遺族が決めるより他はないのだろう。悪徳警察には勝ったが、余韻が残る一本。



 DATA

監督・製作・音楽:クリント・イーストウッド/脚本:J・マイケル・ストラジンスキー/製作:ロン・ハワード

出演:アンジェリーナ・ジョリー/ジョン・マルコヴィッチ/ジェフリー・ドノヴァン/コルム・フィオール/ジェイソン・バトラー・ハーナー/マイケル・ケリー/エイミー・ライアン/ジェフ・ピアソン



hiroでした。



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