32本目(5月30日鑑賞)

どう生きたいのかを考えよう
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神様メール

監督・脚本・製作総指揮:ジャコ・ヴァン・ドルマル/脚本:トマ・グンジグ/音楽:アン・ビエールレ
出演:ピリ・グロイン/ブノワ・ポールヴールド/ヨランド・モロー/マルコ・ロレンツィーニ/ロマン・ゲラン/ローラ・ファーリンデン/セルジュ・ラヴィリエール/ディディエ・ドゥ・ネック/ダヴィッド・ミュルジア/フランソワ・ダミアン/カトリーヌ・ドヌーヴ

ブリュッセルに住む神(ブノワ・ポールヴールド)は、妻(ヨランド・モロー)と娘エア(ピリ・グロイン)にとって絶対的支配者。仕事と称して「無の部屋」に篭りパソコン操作で人の不運を作っていた。父の所業に腹を立てたエアは、父が寝ている隙に世界中の人々に余命を知らせるメールを送り、そのまま人間の世界に家出をする。

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裏切られた!もっとハートウォームコメディかと思ってたら、シュールでアートでファンタジーで攻撃的。プラス方向に裏切られるのはうれしい悲鳴!

神は最初にブリュッセルの街を作った。いろいろな動物を作り住まわせたが、自分に似せて作った人間が一番よかった。それが「人類創世」。世界も人間もパソコンで作られたという。なにこの「んなわけないやん!」の切れ味!攻めてる!のっけからやられたー!

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神がファッキン親父でDVで。暇つぶしに人の不幸を楽しむ。その不幸がよくある小さな不運だったりするのでリアル。彼の暴走がドタバタ喜劇を生む。あらゆる不運は神のせい。

エアは人間界で性別も年齢もバラバラな6人の使徒を探す…有名な兄(笑)の助言のとおり「新新約聖書」を書くために。

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その6人も、様々な問題を抱えている。多くの人が、子供の頃の追体験の中で生きているのが興味深い。余命宣告が彼らに残された時間の「生き方」を問う。

人は生まれた瞬間から最期の時に向かっている。ところが不思議なほど「死」を意識することがない。不死身であるはずなどないというのに。「どう死ぬか」と「どう生きるか」は同義語なのだと気づかされる。

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エア役ピリちゃん。文句なく可愛い。「サンドラの週末」に出てるらしい。録画ネタがあるので今度観よう。神=ポールヴールドはコメディアン。こわもて、やさぐれ感がよい。母であり女神のモローは舞台女優の実力派。「アメリ 」にも出演。

予備知識ゼロのため名優カトリーヌ・ドヌーヴに気付かない失態。禁断の愛に溺れるマダム役。観たことがある殺し屋にはフランソワ・ダミアン。「エール !」のパパだった。個人的にはヴィクトールのマルコ・ロレンツィーニがお気に入り。

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本作がベルギー・フランス、「君がくれたグッドライフ」がドイツ・ベルギー、「素敵なサプライズ」がオランダ・ベルギー。いずれも同時期公開の余命や尊厳死、安楽死など死をテーマにしたベルギー作品。尊厳死が認められるベルギーとその周辺の人々にとって死は身近な話題なのかも。チョコとワッフル食ってビール飲んでるだけじゃない。

さらに近作、「追憶の森」「世界から猫が消えたなら」と死が重なる。こんな世の中だから「どう生きるか」は、誰にとっても大切な命題なのだろう。

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ブリュッセルの街をキリンがダチョウが闊歩する創世記。その文明はどこから来た?ヨーロッパなら中世とかそういうのあるっしょ。だいたい神様の使うパソコンって誰が作ったの。変でしょ。こういうの好き!

なのに、エアに大人びたメイクをさせたり、あいだにケヴィン(笑)入れてきたり、ハンドダンスの妙技があったり、の飽きさせない計算された編集だったりする。ありえない設定がきちんと整理されているから、楽しく観られる。

神様といえば奇跡。動物と話したり、ハムサンドを増やしたり、水面を歩いたり。でも、エアはもっと素敵な奇跡を起こしている。どん底の人々に愛を芽生えさせる。そして、それはエア自身にも。



hiroでした。
日本カルチャーが不意にセリフに登場してビックリ



脚本8 映像8 音響6 配役8 音楽8
38/50