54本目(10月8日鑑賞)
蜩ノ記
監督・脚本:小泉堯史
撮影:上田正治
衣裳:黒澤和子
音楽:加古隆
原作:葉室麟
出演:役所広司/岡田准一/堀北真希/原田美枝子/青木崇高/寺島しのぶ/吉田晴登/三船史郎/井川比佐志/串田和美/小市慢太郎/中野澪
江戸での不祥事で切腹を命じられた秋谷(役所広司)だったが、藩史である家譜の編纂半ばであったことからその執行を10年延ばされ、幽閉の上、静かに編纂事業を続けていた。
執行まで3年に迫ったある日、藩の祐筆庄三郎(岡田准一)が家譜の清書役として秋谷の前に現れる。庄三郎には家老の中根(串田和美)から受けた「監視」という密命があった。
静か。
それが心地よい。
静寂の快がここに。無音ではない。適度で、適切な曲が、効果的。さらには里山。微かに枝を揺らす風の音、川床を洗う水の音、時には音のない画に音が聞こえた気にさえさせる。
映画音楽が好き。ただし、音楽が芝居の邪魔をしてはいけない。芝居を活かすのが映画音楽。
音楽とともに作品を支えるのが里山。美しくもあり、触れただけで壊れそうな儚さもあり。遠野である。柳田国男である。宮澤賢治である。納得とともに、遠野の持つ里力に驚愕。
作家山本周五郎の代表作のひとつ「樅の木は残った」。役所さん演じる秋谷を観て、その主人公原田甲斐を思い出した。「忠」。亡き大殿への忠、お家への忠。外国人にはわからない。多分現代人も納得いかない。「己」よりも「公」。
悪役として描かれる中根でさえ「忠」の人。現代の尺を当てたら間違いなく「なんだお前は!」と。それが当時のルールであり、美徳。「忠」の対に「義」がある。秋谷の清々しい振る舞いで「忠義」を知る中根。終劇間近で顔を合わせる二人の演技。「渇き 。」と相対の役所さんもさることながら、串田さんさすが。
岡田君が本気。「SP」の格闘技に続き、ここでは居合い。長回しの居合いシーンは強く、美しい。またしても、稽古に通った様子。彼はいつも本気。本気は人の心を、打つ。
堀北さんの舞いも合格。原田さんは最も輝いてるのではないか、今が。崇高君も「おいおい」な役を好演。そんな大人たちを霞ませたのは二人の子役。吉田晴登の居合いが「お見事!」。
パターンにはまりがちな日本映画。そこに一石を投じた「るろうに剣心 」。殺陣のニューウェーブと両極の本作。背筋が伸びる様式美がそこにある。どちらも褒めるのはなぜか。どちらも本気だから。
クロサワの系譜を継ぐ小泉監督、正しい映画音楽を聴かせていただいた加古隆さん。ありがとうございました。
hiroでした。
脚本6 映像8 音響8 配役8 他(音楽)8
計38/50