黒川伊保子(いほこ)氏の心に響く言葉より…

 

 

以前、新聞のコラムに、「企業や役所は、不祥事の謝罪に漢語(認識、遺憾、反省、不適切など)をよく使うが、大和ことばで謝ってはどうか」という提案があった。 

 

たとえば、「この結果は認識外でした。遺憾の極みであり、不適切な行為であったと反省します」は、大和ことばを使うならば、「こんなことになるとは思いもよらず、 軽はずみにひどいことをしてしまいました。本当に、ごめんなさい」となる。 

 

前者は、ひたすら畏れ入る感じが伝わり、後者は担当者の胸の痛みが伝わる。

 

 

私自身は、職務に徹し、私見を排除した漢語使いのほうが好きなのだが(プロは自らの胸を痛める前に、事態の収拾にかからなければならないからね)、いけしゃあしやあと漢語謝罪を重ねられると、つい、「一度くらいは、大和ことばで謝ってみなよ」と言いたくなる。

 

自分のことのように、はだかの心で悲しんでみなさいよ、と。 

 

 

大和ことばは、この国固有のことばで、訓読みという音韻体系でくくられる。

 

いのち、こころ、ありがとう、そら、くに、のぞみ・・・・・・なんだか、心にしみいるような、 温かな人間味を感じないだろうか。 

 

これを音読みのことばに置き換えてみると、生命、精神、感謝、天空、国家、希望となる。

 

スケール感のあることばたちだが、なんだか素っ気ない。

 

 

どうにも、他人事 のような感じなのだ。

 

「感謝します」だなんて、本当に嬉しいの?と聞きたくなっちゃうくらいに。

 

また、工場をコウバと読めば、気心知れた仲間で働くところを、コウジョウと読めばグローバル企業を思い浮かべる。 

 

 

そう、私たち日本人は、漢語にグローバルな社会性を、大和ことばに私的な情緒性を感じているのである。

 

そして、それは、慣習のせいだけとも言いきれないのだ。 

 

 

漢語は、口腔(こうこう)をあまり高く上げず、息を強く吐きだしたり、擦りだしたりして発音する。

 

漢語に多い、サ行音・カ行音・タ行音・濁音と長音、撥音(はつおん)の組合せが、そうさせるのである。 

 

口腔を低く使うので、手の内を見せない感じがする。

 

息を強く擦りだすので、毅然 とした感じを作りだすし、口腔表面の温度が下がるからクールなのだ。

 

だから、パブリックな場には漢語が似合う。

 

実はこれ、ドイツ語や英語に多く見られる音韻傾向でもある。 

 

 

一方、大和ことばは、拍(はく/カナ一文字)ごとの母音(ぼいん)をしっかりと発音する。

 

母音は、 口腔の形で音の区別をつけるので、口を良く開けることになる。

 

身体の内部(口腔) をさらけ出すので、心のうちまで見せた感じがして、ことばを交わす者たちの間に親密感が育まれる。

 

こちらの音韻(おんいん)傾向は、イタリア語やスペイン語に多く見られる。 

 

 

日本語は、不思議なことばで、合理性の高いパブリックな音韻体系と、私的で親密な音韻体系とを、ほぼ完全に二重に持っているのである。

 

その証拠に、思いつくほぼすべての文章表現を、ほとんどの日本人が漢語系と大和ことば系で表現できるはずだ。

 

 

かつて甲子園を沸かせた徳島池田高校の名監督・蔦文也(つたふみや)氏は、「試合前に子どもたちを激励するときは漢語を使い、試合後にねぎらうときには大和ことばを使う」と言ったそうである。 

 

私たち日本人は、こうして、合理的思考と情感表現を自在に使い分け、人間関係に留まらず、芸術や産業の領域に稀代(きたい)の器用さと独創性を発揮している。

 

日本語の素晴らしさはここに極まれり、と、私は思う。 

 

ところで、「愛(あい)」は音読みだって知っていましたか? 

 

だから日本男子は、「愛してる」なんて他人事のようで、恋人や妻相手に口に出せないのかも?(微笑)

 

 

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高橋こうじ氏は著書「日本の大和言葉を美しく話す/東邦出版」の中でこう述べている。

 

 

『大和言葉とは、太古の昔に私たちの先祖が創り出した日本固有の言葉。

 

また、その伝統の上に生まれた言葉です。

 

「山(やま)」「川(かわ)」「夢(ゆめ)」「ふるさと」、みんな大和言葉です。

 

漢語は中国語から取り入れた言葉で、「山地(さんち)」「河川(かせん)」など、つまり漢字の読み方で言えば、音読みで発音されるのが漢語。

 

訓読みが大和言葉です。

 

また、大和言葉を使うと言葉に奥行きが増します。

 

たとえば、「チョー素敵だった」と言うなら、「このうえなく素敵だった」。

 

「感激した」と言うなら、「いたく感激した」と。』

 

 

「試合前に子どもたちを激励するときは漢語を使い、試合後にねぎらうときには大和ことばを使う」(蔦文也)

 

心に沁(し)みる「大和ことば」を折に触(ふ)れて使いたい。

 

 

 

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