斜線堂有紀さん、ミステリーの人という印象だったんだけど、いやいや、こういうのも書けるんですね。
『ミニカーだって一生推してろ』のヒロインは二十八歳の地下アイドル、赤羽瑠璃(あかばねるり)。
自分を押してくれるファンに一方的に思いを募らせ、ついには男性の部屋に侵入するというストーカー行為に及ぶ。
『きみの長靴でいいです』のヒロインは、天才ファッションデザイナー・灰羽妃楽姫(はいばねきらき)。
妃楽姫には、二八歳の誕生日プレゼントにガラスの靴を送ってくれる十年来のビジネスパートナー、妻川がいる。
妃楽姫は、妻川と結婚すると信じていた。しかし、プレゼントを次の瞬間、彼女が聞いたのは、妃楽姫以外の女との結婚報告だった。
『健康で文化的な最低限度の恋愛』
会社の新入社員、津籠に一目ぼれした美空木絆菜は、彼の気を引くため、私生活の一切を犠牲にして、彼の趣味、サッカーと登山に話を併せた結果、絆菜は孤独に山の中で死にそうになる。
『愛について語るときに我々の騙ること』と『ささやかだけど、役に立つけど』は、新太、園生、鳴花の男二人、女一人の奇妙な三角関係。
二人よりも三人のほうが、ずっと安定している。鳴花が望む、友情とも、恋愛ともちょっと違う三人の関係は、果たしていつまで続けられるのか。
それぞれに歪な愛の形に苦しみ悩む女性たちの短編集。
いやいや、どれもかなり面白かったけど、『健康で文化的な最低限度の恋愛』がイチオシかな。
絆菜、怖いわ。