伯父が生前所有していた小さな無人島の別荘。里英はこの島のリゾート開発を目論む父やその関係者たちと総勢9名でその島を訪れた。
初日の夜が明けると1人が殺されていた。
犯人はきっと私たちの中にいる。しかし警察に通報することはできない。なぜなら、
「この島にいる3日の間、決して殺人犯を見つけてはならない」
それが犯人が課した戒律だったから。
と、まあ、アガサ・クリスティーの名作「そして誰もいなくなった」みたいな、孤島というクローズドサークル内で起こる連続殺人事件なのですが、
この作品が特殊なのは、犯人から「3日間で解放する。その間は犯人を捜すな。外にも連絡するな。したら全員死ぬ」というメッセージがあり、それを全員で守るところ。
島にはなぜか大量の爆薬があり、その起爆装置を犯人が持っていると思われることから、島のメンバーたちは電波は通じるのに通報しない、殺人事件にも見て見ぬふりするという展開。
(以下ネタバレありです)
結局3人が死亡、綾川さんという女性が「仲間割れの挙句、2名が殺され、1名が事故死」という鮮やかな推理を展開し、残された6人は島から無事解放されるのですが、
でもこれで終わるはずはないですよね、当然最後にあっというどんでん返しが待っています。
この作品、昨年評判になった同じ著者の「方舟」と似ている。方舟は閉じ込められた地下施設での、クローズドサークルでの連続殺人事件。本のタイトルも、装丁までもがよく似ています。
「方舟」はこのミス4位、文春1位、ミステリが読みたい!7位、本格ミステリ2位
「十戒」はこのミス13位、文春6位、読みたい!11位、本格7位
と、「方舟」の方が評価が高い、やはり悲惨な結末、犯人のイヤミス度等を比較すると。私も「面白かったけど、やはり方舟には負けるよね」と思いました。
でも、まてよ、この性格というか、やり方というか、犯人像までよく似てるよなと思って読み進めると、ホームズ役の綾川さん、名前は旧姓で本名は違う、夫は行方不明中ということが判明、そして下の名前は明かされぬまま。おいおい、綾川さん、下の名前はもしかして「麻衣」?なんて、そう思って読めば、衝撃度は5割増し。
ということで、まず「方舟」を読んでから本作を読むこと、強くお勧めいたします。