文庫本も出たし、年末にTVドラマにもなっていた「自転しながら公転する」の著者・山本文緒さん、2021年10月に急逝した彼女の、これはもしかして遺稿?と思ったがさにあらず。彼女が亡くなる直前まで綴っていた日記だった。
すい臓がんのステージ4b、治療法なし、余命4か月宣言を受けた彼女は、緩和ケアの道を選択し、夫と軽井沢の自宅で闘病生活を送ることとなった。
時は折しもコロナ禍のさ中、ちょうど1年延期になった東京五輪が開催されたころ、夫とふたりだけで無人島に流されてしまったかのような生活の中で書くことを手放さなかった彼女の日記は、闘病記というわけでもない、死を覚悟しながらも揺れ動く心情が、作家の目で客観的につづられていた。
私も同時期に彼女と同世代の友人をすい臓がんで亡くした。その彼女も匿名でブログを綴っていて、最後の日の文章を読んだときに心が震えたのを思い出した。
彼女は山本さんと違って自覚症状のないまま人間ドックでがんが見つかり、抗がん剤治療を選択し、1年余りの闘病の果てに奇跡に入った。
環境は違うものの病気の進行の状況などはほぼ一緒。時として感情を売れ動かしつつも、表面的には淡々と不治の病と向き合ったその態度も似通っている。
それにしてもすい臓がんは怖い。
私も人間ドック検診は毎年必ず受けているが、昨年の人間ドックでは、ガスが邪魔してすい臓の様子がよくわかりませんでした野の医師の説明。おいおい安くない追加料金払ってんだからそれはないでしょと思ってしまいましたが、、、さて。
本当に明日は我が身かもしれない、もしそうなったときに彼女らのように客観的に自分を見つめ「うあまく死のう」と思えるのだろうか。
そう思えるためにも、今できることは、1日1日を大切に、悔いなく生きることだよなと、やりたいと思ったことは躊躇なく実行に移そうと、あらためて思った次第である。