「早稲田松竹」で「月の満ち欠け」を観た。 | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

早稲田松竹

 

「早稲田松竹」はいわゆる「名画座」、過去の名作や封切館で公開を終えた作品を格安に上映する映画館です。私が高校生、大学生の頃は、新宿や渋谷にもこの手の映画館がたくさんあったのですが、今は都内では数えるほどになってしまいました。わざわざ映画館まで行かなくとも、昔の映画を観る手段はありますもんね。

月の満ち欠け

そんな数少なくなった名画座のひとつ、高田馬場の「早稲田松竹」で「月の満ち欠け」が上映されたので観に行ってきました。

昨年12月に公開された映画ですが、直木賞を受賞した佐藤正午さんの原作小説にもこの「早稲田松竹」が登場し、映画のロケにも使用されたとのこと、制作会社も松竹だったのでこの特別上映が実現したということのようです。

実際、スクリーンに早稲田松竹が映し出されたときは、不思議な感じがしました。

 

配役は、主役とその妻が大泉洋さんと柴咲コウさん、恋に落ちた人妻と大学生に有村架純さんと目黒蓮さん、有村さんの夫役(ちょっと怖い)に田中圭さん、なかなかの豪華キャストです。

 

ストーリーは、三角哲彦(目黒蓮)との禁断の恋が成就することなく事故死してしまった正木瑠璃(有村架純)が、大泉と柴咲の子どもの小山内瑠璃としてこの世に生まれ変わるも、三角と再会する直前でまたも事故死、さらにその子どもの親友の娘として生まれ変わるというファンタジーもの。

 

もちろん映画の脚本用に細部は書き換えられていましたが、大筋はかなり原作に忠実。

それでいて有村架純と目黒蓮のシーンにはジョン・レノンの”Woman”が流れ、ヒロインの口ずさむ歌も黛ジュンの「夕月」からレノンの”Remember”になっていて、硬い感じだった原作がかなりおしゃれに。

神田川

 

昔ながらの名画の二本立て上映、同時上映は昨日までが「アンナ・カレーニナ」、今日からは小津安二郎の「東京暮色」、いずれも「月の満ち欠け」本編の中で取り上げられている作品で、こういうところも気が利いてます。

 

実は高田馬場は私の現住所の隣駅で、高田馬場駅前や神田川、リーガロイヤル東京ホテル等、自分のなじみの場所がたくさんスクリーンに登場しました。

有村さんと目黒さんのシーンは80年代の設定だったので、BIG BOXの外装も今と違うし、ドンキも駅前広場のエレベーターもない。どうやって撮影したのかなと思ったら、これ、わざわざセットを作ったんだって。セットとは全然気が付かなかった。

 

とにかく原作を尊重しながらも、美しくも切ない、ハラハラドキドキ、涙を誘う作品に仕上がっていて大満足でした。

 

実は、早稲田松竹には初めて入館しました。シートはゆったり、ふかふかで座り心地も良い。こえならまた来ようかなと思わせる、素敵な映画館でした。

今回は特別上映ということでほぼ満席でしたが、普段はどうなのかな。なくならずに頑張ってほしいです。