「蒼い時」(山口 百恵) 衝撃の自叙伝を再読 | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

蒼い時

 

この本、山口百恵の現役時代を知っている人と知らない人とでは、全然感じ方が違うのだろう。引退後は一度もマスコミの前に姿を見せないし、現役当時の彼女を知らない今の若い人から見れば、三浦友和の奥様、三浦祐太朗、貴大の母ということになるのかな?

 

とにかく若さに似合わない存在感を持った人だった。この本もリアルタイムで読んで衝撃を受けた記憶あり。改めて読んでみたけど、アイドルの告白本の枠を超えたものであることは間違いない。

百恵

認知はされているものの非嫡出子、いわゆる愛人の子として育ったことが、包み隠さずに、といって露悪的でもなく、淡々と、かつ周囲への気遣いも感じられる文章で語られている。父に対してだけ悪意を感じる書き方になっているが、それは彼女が有名人になってから急に父親ぶった態度を取り金銭トラブルを起こしたことについてであり、幼少時代の父のことは決して悪くは言っていない。大人だなー。

 

「青い果実」や「ひと夏の経験」、14歳という年齢に不釣り合いな歌詞を歌っていた当時の気持ちや、自らの初潮、初体験のことも、率直かつこともなげに語られている。

三浦友和さんのこと、確か、ステージ上で突然恋人宣言をしたんだった。「伊豆の踊子」で初共演したときは、山口さんが15歳で三浦さんが22歳。以来TV、映画で共演を重ねた二人だが、この頃の7歳差って大きいよね。その二人がお互いを意識し、惹かれあい、付き合いはじめ、やがて結婚を決意するまでの経緯は、中々に爽やか。

 

でもまさか本当に絶頂期に、22歳の若さで、芸能界を完全に引退してしまうとは、、、当時の三浦友和は山口百恵あっての三浦友和、山口百恵が引退したら彼も仕事がなくなって生活に困っちゃうのでは、と本気で心配したものです。でも、まあ、決意のほどを読めば、極貧の母子家庭で育った彼女にしてみれば自然な選択だったのだなと思える。

 

ゴーストライターの手によるものではない、彼女自身が紡いだと思われる、年齢らしからぬしっかりとした文章。14歳でデビューし僅か8年、人気の絶頂で引退しその後一切マスコミに顔を見せなかった彼女。あとがきの最後の「倖せになります」の一行が印象的。

百恵その後

山口百恵、今、でググると、隠し撮りかな、何のオーラもない、普通のおばさんになった彼女の写真に、その後の人生がきっと幸せだったのだろうなと思う。