「どうしても生きてる」(朝井 リョウ) ヒリヒリ感が半端ない、現代のお仕事小説 | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

どうしても生きてる

 

現代の仕事と人生に纏わる葛藤を掬い取った短編が6編。

 

マンネリと化した仕事をこなす日々に、理由もなく、ふと、死んでしまいたいと思うときがある。死に魅せられながらも日常を送る女性の話。(『健やかな論理』)。

 

「バグマン。」さながらに親友と漫画家になる夢を追い求めた日々。才能の限界を自ら悟り夢を諦めた男は、家庭や仕事に悩み、後ろめたさを感じながらも生きていく。(『流転』)。

 

リストラされる非正規雇用者の女性は、見下すことができるYoutuberのおバカな画像が手放せない。

(『七分二十四秒めへ』)。

 

仕事上の不正で正義感に押しつぶされ、壊れていく夫を横目で見つつ、でも今の生活は変えられないと考えることを放棄する妻。

(『風が吹いたとて』)。

 

妻に仕事で差を付けられてプライドが傷つき、EDになってしまった男。そんな彼の尊敬する元上司が女王様にいたぶられ、わめき叫ぶSM動画が流出した。男はサイトで知り合った格下のセフレとのオーラルセックスで思い切り叫ぶことで、心の痛みを開放する。

(『そんなの痛いに決まってる』)。

 

性別、容姿、家庭環境。生まれたときに引かされる籤は、どんな枝にも結べない。中学生の時に母親を亡くし、母親代わりでいつも割を食ってきた女性のささやかな八つ当たりと開き直り。

(『籤』)。

 

まとめてしまうといかにも薄っぺらい感じになってしまうが、実際に読むと、どの作品も生々しさ、ヒリヒリ感が半端ない。

改めて朝井リョウはすごい!と思わせる1冊。