「私はただ、ずっと彼のそばにはりついていたいのだ」―OLのテルコはマモちゃんに出会って恋に落ちた。彼から電話があれば仕事中でも携帯で長話、食事に誘われればさっさと退社。すべてがマモちゃん最優先で、会社もクビになる寸前。だが、彼はテルコのことが好きじゃないのだ。テルコの片思いは更にエスカレートしていき…。
直木賞作家が濃密な筆致で綴る、全力疾走片思い小説。(「BOOK」デーベースより)
映画が評判になったみたいだけど、残念ながら映画は未視聴。
妄想女の恋愛物語というと、やはり映画になった綿矢りささんの「勝手にふるえてろ」が思い浮かぶけど、それに負けず劣らず、テルコがやばい。病気の彼に買い出しを頼まれ、家を訪れたが、終電もなくなった頃に家を追い出され、一文無しでトボトボと徒歩で帰途につき、助けを求めた友人に呆れられるシーンから、この小説が始まる。
テルコの耳には友達の常識的なアドバイスも全く届かない。仕事や職場の人間関係なんてそっちのけ、マモちゃん優先の対応で、会社でも浮きまくってクビ寸前。そこまでやっておきながら、マモちゃんの前ではあくまでさりげない、負担になんかなってないよという演技を続けるテルコ。でも、明らかにやりすぎの重たい女に、普通、男だったら絶対気付くよね。
身体の関係とかも当然あったりするのだが、でもマモちゃんは、テルコのことが好きじゃない。単なる都合のよい女でしかない。好きじゃない女にここまでしたりされたりして、ヤバいんじゃないかとか、怖いとか、これ以上は関わり合いにならないでおこうとか、普通は思うよね。でも、マモちゃんは、自分の好きな女のプレゼントを買いに行かせたり、その女と付き合うためにテルコを利用することにも躊躇いがない。マモちゃん、かなりのクズです。
テルコみたいな人がもし職場にいたら、絶対「ふざけるな」と思うし、マモちゃんみたいな人とは友達になりたくない。二人に対する共感度はゼロ!ハッピーエンドにはなりそうもない二人の恋の行方は、、、どうにも理解できなくもやるせない、でも少しだけクセになりそうな病んだ恋の物語。