小泉浩太郎さんでTVドラマにもなった杉村三郎シリーズ、面白いのでずっと追っかけている。5作目となる最新作は中編が3編、帯には「杉村三郎vsちょっと困った女たち」とある。このシリーズで困った女キャラと言えば、「名もなき毒」の原田いずみがかなり強烈だったが、本作にも、ちょっとではなく、彼女に勝るとも劣らない強烈キャラが登場する。
「絶対零度」で、杉村探偵事務所を訪れたのはの50代半ばの品のいいご婦人。一昨年結婚した27歳の娘・優美が、自殺未遂をして入院したが、夫が会わせてくれず、メールも繋がらないのだという。どうやらかなり性格的に問題のある夫らしい。さらに、類は友を呼ぶ、この夫の先輩にとんでもない人が。杉村は、この自殺未遂の裏で陰惨な事件が起きていたことを突き止めるのだが、、、。
「華燭」では、杉村は近所に住む小崎さんから、姪の結婚式に出席してほしいと頼まれる。小崎さんはこの姪の母親である実の妹と絶縁状態にあり、式にも出たくないので、自分に代り中二の娘・加奈に付き添ってほしいとのこと。ところが結婚式場に行ってみると、定刻になっても式は始まらず会場は大混乱で、、、。
「昨日がなければ明日もない」では、事務所の大家である竹中家の娘のクラスメートの母親、朽田美姫から相談を受けることになるが、これが親子そろって大変な問題児。美姫は16歳で生んだ私生児の長女の他に、別れた夫に親権を渡した6歳の男の子がいるが、「この子の命が危ない」という。ところがこの彼女の主張が我田引水、意味不明のトンデモ話ばかりで、、、。
結局、この3つの話のうち、2つはかなり悲惨な結末を迎えることになる。
この杉村三郎さん、3作目の「ペテロの葬列」までは、逆玉の妻の父親の会社ではあるが普通の会社員で、それが探偵まがいのことをやっていたわけだが、前作の「希望荘」からは妻と離婚し、本当の探偵になってしまっている。
といって彼のスタンスが大きく変わったわけでもない。卓越した推理で難題を解決に導くわけでも、身体を張って事件を未然に防ぐわけでもない。事件が落ちるところに落ち着くお手伝いをしているといった程度の印象なのだが、同時に事件の全貌を常識人の観察眼を持ってレポートする、それがなんとも小気味よい。とはいえ、聞き込みのやり方など、杉村さんも段々と探偵らしくなってきたかな。
「希望荘」と本作も同じキャストでTVドラマ化してほしいなー。