読んだ本は13冊、1月に続き少な目でした。
◆信長の原理(垣根涼介)
「光秀の定理」に続く、著者独特の視点の歴史小説。
ブラック企業の信長株式会社も、尾張⇒畿内⇒全国とステージを上げていくに伴い求める人材が変化する。当初成果を上げた者も新進気鋭の人材に窓際に追いやられる。ワンマン社長命令で担当替えや異動も日常茶飯事、限界まで働かされ不要になれば苛烈な仕打ちを受ける環境に、部下は疑心暗鬼になり、信長の考えを深読みし、すり減り、離反していく。でも傲慢な信長は部下の考えを推測する能力に欠ける。本能寺は自業自得ということか。
◆ひと(小野寺史宜)
本屋大賞ノミネート作ということで手に取った、初読みの作家さんの本。両親を失い大学も中退、一人東京で生きていかなくてはならなくなった20歳の聖輔くんの1年間の成長物語。素朴で誠実で謙虚で、優しく気遣いの出来る彼の姿に、自然と周囲に良い人が集い、彼を助ける。見ている人は見ている、世間も捨てたもんじゃないなとほっこりさせられる、幸せな読後感に浸れる作品。
◆それまでの明日(原尞)
今年の「このミス」1位ということで大いに期待して手に取ったが、昨年1位の「屍人荘の殺人」とは真逆の、古き良きミステリー風の作品だった。
主人公はスマホどころかガラケーも持っていない昭和な探偵。事務所は新宿のはずれ(ウチの近所だ)。本格っぽさはほとんどなく、ストーリー主体。文体はちょっと気障なハードボイルド。なかなかに味のある作品、こういうのもたまには良い。
◆肉小説集 (坂木司)
豚肉をテーマにした短編小説集。でも、グルメではない、むしろ料理に関してはまずそうな描写が多い。「アメリカの王様」「ほんの一部」が面白かった。knight役を果たした小学生が、救った少女の太ももの傷口を舐めたら生ハムの味だと!産毛とか、ケモノっぽいといか、生々しい。
◆ビブリア古書堂の事件手帖 ~扉子と不思議な客人たち~ (三上延)
「ビブリア古書堂の事件手帖」の続編?番外編?なるほど、お二人の仲が急接近したのは東日本大震災の頃、あれからもう7年も経つのですね。二人にとって、平穏な時間が流れたようで、幸せそうでなによりです。お話の内容は相変わらずの古書に纏わるあれこれで、懐かしい人物も登場して、安定の面白さ。
◆幼女戦記 9 Omnes una manet nox(カルロ・ゼン)
マッドサイエンティストの兵器で連合王国艦隊撃滅と相変わらずの悪魔っぷりのターニャの二○三航空魔導大隊だが、帝国は四面楚歌、戦線はもはや末期状態。でも政治屋も世論も現実を見れずに無理な要求を軍に課す。大日本帝国もかくやと思わせる帝国の現状に、ルーデルドルフやロメールの胸に去来するのはクーデター?となると、有効な実行部隊はターニャの魔導大隊をおいてない。さて、どうする、ターニャ?
◆幼女戦記 10 Viribus Unitis(カルロ・ゼン)
東部戦線ではターニャとセレブリャーコフ中尉が二人で、西部戦線ではターニャ率いる203魔導航空大隊がそれなりの活躍をするも局地的な勝利に留まり、戦局は変わらない。副題のラテン語は「皆で協力して」みたいな意味らしい。外務省にも開明派の若手が現れ、軍と協調した戦争終結への動きも始まったが、時すでに遅しか。予備計画って、てっきりクーデター的なことかと思っていたら、違うのかな?それにしても、引っ張るなー。
◆理科系の読書術 - インプットからアウトプットまでの28のヒント (鎌田浩毅)
自分が文系なので、果たして理系の大学教授はどんな読書をして、どんな読書術を勧めるのか、興味を持って読んだ。理系、文系といっても、本質的な考え方に変わりはないのかな。
ほぼ全編著者の言うところの「知的生産」のための読書術。自分は「知的消費」目的の読書が多いのだが、それでも仕事用にも本を読むので参考になった。補章の「読まずに済ませる読書術」があるある感強く、面白く読んだ。
◆気持ちをあらわす「基礎日本語辞典」 (森田良行)
役に立つ本ではありますが、電子書籍で読んだこともあって、普通に読書するのには少し時間がかかった。やはり辞書として必要な時に使うのが良いのだろう。せめて紙の本にすれば良かった。
◆紀州のドン・ファン 野望篇 私が「生涯現役」でいられる理由 (講談社+α文庫)
なぜか、この人のあの事件?事故?が気になって仕方がない。前作「4000人の美女に30億円貢いだ男」に続き、この続編も読んでみたのだが、単なる助平じじいの回顧録だった。とはいえ、おやじギャグ連発の下ネタ披露は(ゴーストライターの筆力によるものであろうが)それなりに面白かった。
あと30年生きて、エッチをやりまくると宣言、55歳年下の女性との結婚報告で終わるこの本の出版のわずか1か月後に野崎幸助氏は不審死をとげる。著者の人生は悔いのないものだったのだろうか。
◆逆説の日本史24: 明治躍進編 帝国憲法と日清開戦の謎(井沢元彦)
このシリーズもいよいよ「坂の上の雲」の時代に。大久保利通の死後日本の舵取りをしたのは伊藤博文。それにしても明治日本はなんとも危うい隘路を渡り切ったもので、野蛮人から文明国に手の日を返すことに成功した先人たちの知恵と気骨に感心、感謝です。
それにしても日韓問題の根の深さ、近くて遠い国。本質的な部分では決して分かり合えないということを前提に、いかに良い関係を築いていくか、ですよね。
◆ブラタモリ 15 名古屋 岐阜 彦根
今回のは、名古屋、岐阜、彦根。彦根の回だけ放映を見逃したみたい。秀吉の街づくりは大阪や伏見の回で話題になったけど、今回は家康と信長の街づくり編ですね。岐阜城は歩いて登ったことがありますが、とんでもないところに城があるので戦用の山城と思ってました。なるほどそれだけはなかったのか。東海道、なぜ熱田から桑名が海路なのかと思っていましたが疑問氷解。権力者は交通の要衝をしっかり押さえてますね。
◆ブラタモリ 16 富士山・三保松原 高野山 宝塚 有馬温泉
「富士山・三保松原」の回のみ未視聴。新入社員時代6年も関西に住んでたのに、有馬温泉、高野山は行ったことがない。宝塚も、散々行ったけど歌劇はみたことがなかった。灯台下暗しだなー。特に高野山は興味を惹かれた。