19年の最初の月は12冊と少な目。「熱帯」「宝島」の500頁を超す2冊に手間どった。
◆傘をもたない蟻たちは (加藤シゲアキ)
著者の作品は「ピンクとグレー」に次いで2作目。又吉直樹さん、押切もえさん、沙倉まなさん、藤崎彩織さん、芸能人の方々の書く小説って、自分のフィールドを題材にしたものがほとんど、加藤さんの前作もそうだったのだが、今回の短編集は全然違って内容も多彩。シリアスさの中にどことなく面白みもあって、文章も生き生きとしていて読みやすい。
ジャニーズ事務所と侮ってはいけない。こっちを本業にしてもいけるんじゃないか?
◆熱帯(森見登美彦)
森見さんというと、京都のクサレ大学生や狸や天狗が出てくるファンタジーの印象が強いのだが、「夜行」に続き直木賞候補となった本作は、誰も最後まで読んだことのない小説「熱帯」に纏わる、不思議な世界観の奇書。前半はどうなるのだろうとワクワクしながら読んだが、後半はなかなかストーリーが追えず、出張の新幹線の中で、あまり深く考えずにとにかく最後まで読んだ。
森見さんというと、京都のクサレ大学生や狸や天狗が出てくるファンタジーの印象が強いのだが、「夜行」に続き直木賞候補となった本作は、誰も最後まで読んだことのない小説「熱帯」に纏わる、不思議な世界観の奇書。前半はどうなるのだろうとワクワクしながら読んだが、後半はなかなかストーリーが追えず、出張の新幹線の中で、あまり深く考えずにとにかく最後まで読んだ。
よく分からない部分も多かったが、といって今は再読する気力もなく、文庫本になった時に再読しようかなと思っている。
◆宝島(真藤順丈)
第160回直木賞、18年の山田風太郎賞受賞作。正体不明?の語り部が紡ぐ沖縄方言交じりの文章、以前の直木賞受賞作「流」の沖縄版のような、疾走感に溢れる小説。最初は読み進めるのに時間がかかったが、後半は一気読みだった。沖縄は大好きで10回以上訪れてはいるが、宮森小学校事件、毒ガス漏洩事件、コザ暴動、自分は返還前の沖縄の真実を全然わかっていなかった。普天間、そして辺野古の埋め立て、今も基地問題に揺れる沖縄だからこそ、しっかり読まねばならない小説。
第160回直木賞、18年の山田風太郎賞受賞作。正体不明?の語り部が紡ぐ沖縄方言交じりの文章、以前の直木賞受賞作「流」の沖縄版のような、疾走感に溢れる小説。最初は読み進めるのに時間がかかったが、後半は一気読みだった。沖縄は大好きで10回以上訪れてはいるが、宮森小学校事件、毒ガス漏洩事件、コザ暴動、自分は返還前の沖縄の真実を全然わかっていなかった。普天間、そして辺野古の埋め立て、今も基地問題に揺れる沖縄だからこそ、しっかり読まねばならない小説。
◆温室デイズ (瀬尾まいこ)
自分もややいじめられっ子体質だったので、ターゲットが変るとか、自分がなりたくないとか、親に知られたくないとか、その辺の気持ち、分かります。でも、ここまでの事はなかったな、いじめっ子はごく一部、正義の味方もいて、クラス全員で一人を無視するようなことはなかった。この本のように、自分の気持ちの持ちようで、なんとか乗り越えられるものだった。そして、乗り越えたからこそ今の自分がある。
自分もややいじめられっ子体質だったので、ターゲットが変るとか、自分がなりたくないとか、親に知られたくないとか、その辺の気持ち、分かります。でも、ここまでの事はなかったな、いじめっ子はごく一部、正義の味方もいて、クラス全員で一人を無視するようなことはなかった。この本のように、自分の気持ちの持ちようで、なんとか乗り越えられるものだった。そして、乗り越えたからこそ今の自分がある。
優子とみちるにエールを送りたい。
◆スケルトン・キー(道尾秀介)
叙述トリックありのミステリーなんだけど、4人のサイコパス同士のバトルロイヤルはなかなかの迫力。最強のサイコパスと化してしまった鍵人の猪突で淡々とした殺人シーンは衝撃的だけど、どこかさばさばとしていて伊坂幸太郎さん風。序盤ではどうしようもない奴と思った錠也も、彼の不幸な生い立ちを知り、さらに悪辣なサイコパスが登場するにつけ、次第にいい奴に思えてくる。ラストは確り希望も見せてくれて、いつもの道尾作品のねっとりした感じはなく、読後感も悪くない。
叙述トリックありのミステリーなんだけど、4人のサイコパス同士のバトルロイヤルはなかなかの迫力。最強のサイコパスと化してしまった鍵人の猪突で淡々とした殺人シーンは衝撃的だけど、どこかさばさばとしていて伊坂幸太郎さん風。序盤ではどうしようもない奴と思った錠也も、彼の不幸な生い立ちを知り、さらに悪辣なサイコパスが登場するにつけ、次第にいい奴に思えてくる。ラストは確り希望も見せてくれて、いつもの道尾作品のねっとりした感じはなく、読後感も悪くない。
◆夏空白花(須賀しのぶ)
柔道、剣道、野球道、クイズ道なんてことばもある。なんでも「道」にしたがる日本人。戦前戦中散々戦争協力した新聞社が主催する青少年たちの野球道の大会は、日本の徹底的な武装解除と民主化を図るGHQにしてみれば、理解不能で許容しがたいものであったろう。
柔道、剣道、野球道、クイズ道なんてことばもある。なんでも「道」にしたがる日本人。戦前戦中散々戦争協力した新聞社が主催する青少年たちの野球道の大会は、日本の徹底的な武装解除と民主化を図るGHQにしてみれば、理解不能で許容しがたいものであったろう。
「敗戦国の分際で、まだわからんのか」というGHQの姿勢を解きほぐしたのが、神住ら主催者側の熱意とGHQとの相互理解への努力。それも、立場は違えど野球好きの血、ベースボールという共通の言語があってゆえのこと、スポーツっていいなーと思わせる作品。
◆金魚姫 (荻原浩)
ブラック企業での業務に疲れ、恋人にも去られ、自殺を考える主人公の潤が、偶然夏祭りの縁日で取った金魚が少女に変化する。愛しい人を無残に殺された金魚姫の転生の目的が時を越えての復讐であることは序盤から想像がつき、かつ「すべては繋がっている」という謎の老人のことばから、現世に現れた人魚姫のターゲット、哀しい結末がなんとなく想像ついてしまい、読み進めるのが辛い。
ブラック企業での業務に疲れ、恋人にも去られ、自殺を考える主人公の潤が、偶然夏祭りの縁日で取った金魚が少女に変化する。愛しい人を無残に殺された金魚姫の転生の目的が時を越えての復讐であることは序盤から想像がつき、かつ「すべては繋がっている」という謎の老人のことばから、現世に現れた人魚姫のターゲット、哀しい結末がなんとなく想像ついてしまい、読み進めるのが辛い。
直木賞作家、荻原浩さんの中華風ファンタジー、これをハッピーエンドと思って良いのかどうか良くわからないのだけど、中々に読ませる作品。
◆逢魔が時に会いましょう (荻原浩)
お、今月は荻原浩さんが2冊!
評価もされなければ金にもならない妖怪探しのフィールドワークを続ける布目准教授と、映画への夢捨てきれず大学に残る金欠の女子大生・真矢のコンビは、いかにもだけど魅力的。バイト代目当てに布目のフィールドワークに同行、でもなぜか妖怪を呼び寄せてしまう体質らしい真矢の奇妙な体験と二人の微妙な関係。シリーズものにしても良いのではと思える、軽く楽しく読める作品。
◆アリバイ崩し承ります(大山誠一郎)
事件のアリバイを崩す時計屋さんの若き女主人・三谷時乃さんがホームズ役のアームチェア・ディテクティブ。ワトソン役は、個人的にアリバイ崩しを彼女に持ち込む県警捜査1課の新米刑事。
事件のアリバイを崩す時計屋さんの若き女主人・三谷時乃さんがホームズ役のアームチェア・ディテクティブ。ワトソン役は、個人的にアリバイ崩しを彼女に持ち込む県警捜査1課の新米刑事。
「本格ミステリ」ランキング1位作品だけあって、ほんわかした二人の雰囲気とはかなりアンバランスな、そんなのありかと思えるようなアリバイ崩しの短編が7編。本格ミステリーは小説としての面白さを期待してはいけないということか。
◆ゲームの王国( 上)(小川哲)
昨年の山本周五郎賞受賞作ということで前知識なしに読んでみた。ポル・ポトを主人公にした歴史小説?と思ったら全然違った。共産主義革命の恐ろしさ、クメール・ルージュは資本家のように富を生産する術を持たないから、資本家が搾取していた時代よりも民は貧しくなり、その事実を隠すための仲間割れと殺戮が横行する。
史実に基づいた舞台背景も途中から展開がトンデモ話っぽくなってきた。まあ、とにかく下巻へ。
◆おもしろい! 進化のふしぎ 続ざんねんないきもの事典
図書館の関係で、続々、続と逆から読むことになったけど、差支えないよね。
喧嘩っ早いイイズナ、いいですねー。
喧嘩っ早いイイズナ、いいですねー。
ステラーダイカイギュウとアホウドリはちょっと哀しい。
◆砕かれたハリルホジッチ・プラン 日本サッカーにビジョンはあるか? (五百蔵 容)
日本サッカーの伝統的戦術は、個の勝負での劣勢を補う局地的な数的優位と体を張った献身的な守備。対してハリルホジッチが強調したことはデュエルとタクティクス。全体のバランスを取りながら、相手の弱点をつくもので、論理的で反復可能なものであるが、メンタル・フィジカル両面で世界の一流に負けないことがその前提になる。
この本はハリルホジッチを名監督と評価し、それを解任したJFAの不明を非難するものである。こういう本を読んでしまうと、ハリル率いるジャパンをワールドカップで見てみたかったなと思ってしまう。