「スケルトン・キー」(道尾 秀介)サイコパスがバトルを繰り広げるサスペンス・ミステリー | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

スケルトン・キー

週刊誌記者のスクープ獲得の手伝いをしている僕、坂木錠也。この仕事を選んだのは、スリルのある環境に身を置いて心拍数を上げることで、自分の狂気を抑え込むことができるからだ。最近は、まともな状態を保てている。でもある日、児童養護施設でともに育った仲間から電話がかかってきて、日常が変わりはじめた。これまで必死に守ってきた平穏が、壊れてしまう―

僕に近づいてはいけない。殺してしまうから。あなたは死んでしまうから。(「BOOK」データベースより)

 

サイコパス、正式には「精神病質」というのだそうだ。良心・罪悪感の欠如、冷淡、嘘つき、自尊心肥大、自己中心的といった反社会的な性質の持ち主で、でも表面的には口達者で魅力的な人が多いとか。

生まれながらのサイコパスである坂木錠也は、育った児童養護施設でサイコパスであるが故の事件を何度も施設内で起こしてきた問題児。施設を出てからは、自分がサイコパスであることを自覚し、暴発を薬をつかったりして何とか抑え込んで生活をしている。

一方で双子の兄の鍵人は、対照的に里親先で良い子を演じ続けたものの、自分の出生の秘密を知った途端に本性をあますところなく発現させてしまうのだが、、、なるほど、錠也と鍵人は合わせ鏡というわけか。良く見ると、第二章の(三)から、ところどころで漢数字が反転している。

 

さて、この本をどう読んだらよいものか。

叙述トリックありの、ミステリーといえばミステリーなんだけど、うどんと政田も加わってサイコパス同士のバトルロイヤルは迫力のサスペンスだし、最強のサイコパスと化してしまった鍵人の猪突で淡々とした殺人シーンは衝撃的なんだけど、むしろさばさばとした伊坂幸太郎さん風。序盤ではどうしようもない奴と思った錠也も、彼の不幸な生い立ちを知り、さらに悪辣なサイコパスが登場するにつけ、次第にいい奴に思えてくる。

ラストは確り希望も見せてくれて、いつもの道尾作品のねっとりした感じはなく、読後感も悪くない。