「スイーツレシピで謎解きを」(友井 羊) 本格ミステリー仕立ての爽やかな青春、成長物語 | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

スイーツレシピで謎解きを

 

高校生の菓奈は人前で喋るのが苦手。だって、言葉がうまく言えない「吃音」があるから。そんな菓奈が密かに好意を寄せる真雪は、お菓子作りが得意な究極のスイーツ男子。ある日、真雪が保健室登校を続ける「保健室の眠り姫」こと悠姫子のために作ったチョコが紛失して…。

鋭い推理をつまりながらも懸命に伝える菓奈。次第に彼女は、大切なものを手に入れていく。スイートな連作ミステリー。(「BOOK」データベースより)

 

著者の作品は初読み、今年の集英社文庫のフェア「ナツイチ」に入っていたので何となく手に取ってみた。「新潮文庫の100冊」に入っていた「ケーキ王子の名推理」同様、ラノベっぽい、スイーツを題材にしたなんちゃってミステリーと思って読んだが、なかなかどうして、伏線のちりばめ方とか、ミスリードを誘う書きっぷりとか、短編連作だけど一つ一つが正しくミステリーしていた。この人、ちゃんとミステリー側のひとなんだと思った。

 

吃音で推理がうまく言えない引っ込み思案の女子高生というホームズ役の人物設定にも好感を感じる。ワトソン役というわけでもないのだけど、菓奈が淡い思いを寄せるスイーツ男子、真雪に背中を押されながら少しずつ友達の輪を広げていく青春物語でもあり、事件を解決するたびに一つずつ自分の殻を破っていく成長物語でもある。

 

おまけの書下ろしで、思わぬ成長した姿を見せてくれる菓奈、スイーツにあまり興味のない自分が読んでも読後感の爽やかな、青春ミステリーである。