「幼女戦記」6 Nil admirari 八方ふさがり、四面楚歌の状況にターニャは、、、 | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

幼女戦記

生存とは、いつだって闘争だ。帝国軍、ターニャ・フォン・デグレチャフ中佐は極寒の東部戦線において文字通りに原初的な事実を痛寒していた。精緻な暴力装置とて、凍てつき、動くことすら、骨を折る季節。なればこそ、冬には策動の花が咲く。矛盾する利害、数多の駆け引きが誰にも制御しえぬ混迷の渦を産み落とす。 

 

副題のNil admirari、ラテン語で「不思議はない」という意味だそうで。どんなことも起こりえるってことか。今回はターニャの華々しい戦場での活躍はなし。東部戦線は膠着状態、想定外の寒冷地での戦いに冬装備の不足するターニャらサラマンダー戦闘団は苦戦はするも、そこはターニャ、旧ソ連っぽい連邦国の大規模な威力偵察を退け、冬将軍もなんとか克服して春を迎える。ところが今度は南方で同盟国のはずのイタリアっぽいイルドアが演習と称して軍を動員する不穏な動き。停戦の仲介を少しでも有利にという策謀なのだが、帝国としては疑心暗鬼にならざるを得ず、ターニャらサラマンダー戦闘団は首都近郊に再配備。北部で連邦と連携した共和国ら多国籍軍が陽動を開始すると、今度は北方に転進。

四面楚歌の帝国、北方の陽動は欺瞞工作、ハラスメント、掃討に送られたサラマンダー戦闘団も相手がこれでは戦果は挙げられない。八方ふさがりの状況にターニャは非公式に講和を進言するが、個別の戦闘では勝利をしている帝国で受け入れられるはずもない。再び東部戦線で連邦が大規模攻勢の気配、ターニャらはむなしくまたも東部戦線に送られる。。。

うーん、状況がリアル。日米開戦直前の日本も、こんな感じに陥っていたのではないだろうか。戦争は政治の延長であるが、その政治やマスコミが現状を直視できなければ、正論は抹殺される。「中国から撤退すると言ったら、私は抹殺されていただろう」と生前の昭和天皇が言っていたっけ。

さて、あと2巻。戦場の悪魔として敵を蹂躙しながらも一人メタ視点を持つターニャも、なすすべもなく破滅に向かっていくのか。いよいよクライマックス、かな。