「ふたご」(藤崎 彩織)と第158回直木賞候補作 | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

ふたご

彼は、わたしの人生の破壊者であり、創造者だった。異彩の少年に導かれた孤独な少女。その苦悩の先に見つけた確かな光。

SEKAI NO OWARI Saori、初小説! (「BOOK」データベースより)

 

瑞々しい文章、表現力といってしまえばいえるけど、SEKAI NO OWARIを全く知らない人が読むと(実は私もあまりよく知らない)、前半と後半が違う話になっているような、何となくおさまりの悪い小説を読んだという印象を受けるのではないだろうか。

でも、これ、自伝的な小説なんだよね。もちろん創作も入って入るのだろうけど、ベースは「SEKAI NO OWARI 」結成までの体験談を小説にまとめたもの、そういう風に読んだ方が直に心に落ちてくる。Fukase・Saori・Nakajinの関係って、そういう過去があったのかと興味を持って読み進められる。

 

芥川賞まで取ってしまった又吉直樹さんは別格としても、加藤シゲアキさん、押切もえさん、沙倉まなさん、小説を書くタレントさんも少なくないけど、Saoriさんの場合は、二作目が書けるのかが大いに気になるところ。

でも、これ、第158回直木賞候補作である。直木賞といえば大衆文学作家さんたちの登竜門の賞、もしこれが彼女の最初で最後の小説ということになると、本作を直木賞候補にした関係者の方々の選考基準に疑問を感じざるを得ない。

 

さて、もうじき第159回の直木賞が発表になるけど、自分はこれで「銀河鉄道の父」、「火定」、「くちなし」、「彼方の彼へ」、そしてこの「ふたご」、第158回の直木賞候補作の5冊をやっと読了した。

先入観なしにシルシをつければ、本命◎「銀河鉄道の父」、対抗○「火定」、穴▲「くちなし」だろうか。第158回直木賞の「銀河鉄道の父」は、納得の受賞作でした。