「D坂の殺人事件」(江戸川 乱歩)(角川文庫版) 昭和なおどろおどろしさは、やっぱり乱歩 | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

D坂の殺人事件

 

私は東京のD坂にある白梅軒という喫茶店で、明智小五郎という探偵小説好きの妙な男と話していた。すると向かいの古本屋の様子がおかしい。なんとその店の妻が首を絞められて死んでいたのだ。様々な状況証拠から、私は明智が犯人ではないかと推理するが…。(表題作より)国民的名探偵が初めて登場する記念すべき表題作を始め、推理・探偵小説を中心に収録。推理小説の大家・大乱歩の傑作の数々を、ご堪能あれ。

(「BOOK」データベースより)

 
17年のカドフェスに江戸川乱歩、収録作品は表題作の「D坂の殺人事件」をはじめ、「二銭銅貨」「何者」「心理試験」「地獄の道化師」の5作。どういう基準でこの5編になったのか、「二銭銅貨」のみ明智小五郎が出てこない、乱歩初期の掌編。
「D坂の殺人事件」「心理試験」「二銭銅貨」は新潮文庫の「江戸川乱歩傑作選」や他の文庫本で既読だったが、「何者」「地獄の道化師」は初読み。
この二作がなかなかに読み応えのある明智小五郎シリーズの中編だった。特に「地獄の道化師」は150頁に及ぶ中編小説で、石膏の女性裸像の中から死体が出てきたりして、なんともおどろおどろしい。それが、昭和初期と思える街の情景や、今だったら絶対に自主規制されてしまう気ちがいだとか、びっこだとかいった言葉と相まって、「ああ、これが乱歩なんだ」と思わせてくれる。
 
余談であるが、角川文庫の表紙は、漫画・アニメの「文豪ストレイドッグス」の江戸川乱歩である。太宰治や中島敦といった文豪の名前をそのまま冠した異能力アクションものなのだが、この江戸川乱歩の持つ異能は「超推理」、異能というか、そのままである。