「新・箱根駅伝」(酒井 政人)戦国駅伝!来年の箱根はどこが勝つかわからない。 | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

新・箱根駅伝 
 
箱根駅伝に異変あり。5区の区間距離短縮で、「山の神」が消える!?
今井正人、柏原竜二、神野大地……箱根を沸かせた「山の神」の時代は終わるのか?
5区が最長区間になったのは、第82回大会(2006年)からだ。それまでは最長区間である「花の2区」のエース対決が最もドラマチックであるとされていた。また、最後まで勝負がもつれ、復路での逆転劇も多かった。
そんな戦いが長く続いた後に「5区の時代」が到来することになる。2006年以降、箱根駅伝は完全に「5区勝負」のレースに変わったのだ。
しかし、そんな「山の神」の時代も終焉を迎えるかもしれない。2017年の第93回大会から小田原中継所の位置が変わり、5区が23.2kmから20.8kmに短縮されるのだ。(「はじめに」より)

 

自分が市民ランナーなこともあって、駅伝は大好き。マラソンは個人だが駅伝は団体競技、自分が出るような草レースでも、襷の重みは独特のものがあって、つい実力以上に頑張って他チームと競り合ってしまう。

 

ところで、この本は16年10月に書かれたわけだが、17年1月に開催された箱根駅伝は、ほぼ著者の読み通り、山登り勝負の16年までとは違う展開になった。

1区は東洋大の絶対エース・服部が区間賞を取ったが、青学、東海、駒大、早大等有力校が秒差で続き、1区でアドバンテージを作るという東洋大の目論見は外れる。2区は神大の鈴木健が圧巻の区間賞でチームをトップに押し上げ、彼は一躍学生界のトップランナーになった。

勝負のカギはやはり山登りの前の3,4区、王者青学がトップに立つと着実にリードを広げた。駒大は4区にエース中谷を置く布陣も、その中谷が失速して優勝争いの圏外へ。青学は5区を無難にまとめ往路優勝、山の神・神野の卒業後に5区が短くなったことが王者・青学に味方した。

青学は復路に田村、下田のエース級を残していたが、その田村がまさかの不調。でも往路に主力をつぎ込んだ他大学に青学を追う力はなく、8区の下田が2位以下を完全に突き放す。記録こそ平凡だったものの、青学盤石の勝利だった。

 

今年の大学駅伝は戦国時代。昨年は出雲、全日本、箱根と三連覇した青学が出雲で2位、全日本は3位。全日本は、出雲を制した東海大と青学の一騎打ちかと思ったら、鈴木健を擁する神奈川大学が圧勝。でも神大は鈴木クン以外が頑張った。先手必勝の駅伝で、絶対エースを最長区間の7区・アンカー起用したのは賭けだったと思う。その鈴木に17秒差の2位で襷が渡った瞬間に勝負は決したといってよい。

これは、来年の箱根も展開次第でどこが勝つかわからない!楽しみ!

 

でも、著者も言う通り選手にとっては箱根がゴールではないわけで、有望選手や監督は、ぜひ箱根駅伝を通過点に、その先を見てほしいと思う。

現状、日本人選手が5000mや10000mのトラックで世界と勝負できる状況にはない。長距離で勝てる可能性があるのはマラソンと競歩のみ。20km以上のロードを走る箱根駅伝はマラソンにつながるはず。

その点で残念なのは元青学のエース、出岐雄大選手が25歳の若さで引退したこと。今の青学があるのは彼のおかげ。特に3年時の2区区間賞の走りは圧巻だった。彼が青学をシード圏内に引っ張りあげたおかげで、神野大地の代に有力選手が集まり、彼らが3年生の時に初優勝した。4年の時の出岐は往時の輝きはなかったし、中国電力に入ってからも今一つ、箱根で燃え尽きちゃったのかな。