17年5月に読んだ本 | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

5月は19冊、結構読んだようで、でもそのうち2作7冊がライトノベル、読んだきっかけはいずれもアニメ化。

伏見つかささんの「エロマンガ先生」を2巻から7巻まで一気読みしました。このタイトル、買うにしても、借りるにしても、恥ずかしいので何とかしてほしい。

 

◆エロマンガ先生2~7巻(伏見つかさ)
アニメとメディアミックスで楽しんでいます。
ハーレム度も巻を追うごとに上昇、山田エルフ、千寿ムラマサのみならず、智恵やめぐみも参戦の気配。唯一まともキャラと思われた京香さんもダークサイドに堕ち、ますますバカバカしくパワーアップ、お約束の水着回もあり、ラノベの王道を行っています。

残すはあと8巻なのですが、これを読んでしまうと、次巻の発売まで待ち遠しいので、少し間をおいています。第7巻にして大団円が近付いてきた感じ、伏見先生、どこまで引っ張るかな。

◆カブキブ! 1 (榎田ユウリ)
自分も歌舞伎の知識はほとんどないので、歌舞伎の入門書としてはちょうど良い。

でも、実際に黒吾みたいなやつがいたら、確かにちょっとウザいと思う。

直木賞受賞作を2冊。やはり受賞作だけのことはありました。
◆花まんま (朱川湊人)
「トカピの夜」「妖精生物」「摩訶不思議」「花まんま」「送りん婆」「凍蝶」の短編6作。
いずれも昭和40年代の大阪の下町が舞台。最後の「凍蝶」を除いて、ホラーとまではいわないが、ちょっと背筋がゾワッとする話。
自分の子供の頃の話で、自分の記憶があいまいになっているのか、それともあの時代はまだこんな不可思議なことがあったのか。ノスタルジックで不思議な読後感のする作品でした。

◆邂逅の森 (熊谷達也)
東北の寒村でマタギ(猟師)として生きた松橋富治の壮絶な人生。
耕地もろくになく、冬は雪で閉ざされる、どうにも貧しい東北の山間の寒村に現金収入をもたらすものは山の獣たち。自然に畏敬の念を感じ、禁忌を守る、鉄の掟で結ばれたマタギたち、
そんな彼らは、恋愛もどこか獣じみている。夜這いをかけ、孕ませた身分違いの娘、文枝、所帯を持った娼婦のイク、男たちに負けず劣らず、女たちの生きざまもすごい。

存在感のある、圧倒される、素朴でエネルギッシュな小説でした。

 

今月は、ミステリーはやや少なめ、4冊だけでした。
◆リバース(湊かなえ)
ドラマ化がきっかけで読んだ本。小説はあっさり読み終わっちゃったけど、ドラマは1クールあるので、いろいろと話を膨らませています。
イヤミスの女王にしては、毒がないというか、あっさり想像の範囲内のエンディングと思ったら、最後にありましたね、サプライズが。

さて、ドラマのエンディングはどうなるのか、、、

◆○○○○○○○○殺人事件 (早坂吝)
ノベルス版で読んだが、文庫になったので購入、再読。

面白ければ何でもありの第50回メフィスト賞受賞作、15年本格ミステリ6位作品、再読だからトリックも犯人も分かっているのだが、それでも十分楽しめた。
本格ミステリ信者ではない私ですが、上木らいちシリーズはエロ楽しくて、これ以降全部読んでいます。

◆十二人の死にたい子どもたち(冲方丁)
冲方さんがミステリーなんて、初めてではないでしょうか。
後半にして、やっと死にたい動機を語り、他人にも興味を示し始める少年・少女たち。しっかりしているようでも子供は子供、親や環境に対する無力さ、人生経験の乏しさが見えてくる。
目次で大体ストーリーの予想がついてしまったので、自分としてはやや残念。


◆ずうのめ人形(澤村伊智)
久々にホラーを読んだが、怖かった。ずっと昔に「リング」を読んだ時の衝撃を思い出した。

 

本屋大賞のランキング作品を2冊。
◆桜風堂ものがたり(村山早紀)
書店を辞めた青年、DVにあった子供、飼い主に去られたオウム、捨て猫、居場所を失った者たちが偶然に集った、桜風堂という世間から忘れ去られたような書店、そして青年の「押し本」を売ることで一致団結した元同僚たちの仲間と本に対する熱い気持ち。ベタな設定をすべて良しとしてしまうような半強制的な優しさが全編に流れる作品。
本屋大賞5位、この本を押した書店員さんたちの、本に対する愛情が十分に伝わってきました。って、この本、図書館で借りて読んじゃったので、ダメじゃん、自分。

◆i(アイ)(西加奈子)

ワイルド曽田アイ、名前やルックスと裏腹に地味キャラ、理解ある親と親友の存在があって、自問自答の末にやっと悟りたどり着いたみたい。

直木賞受賞作「サラバ!」に似た印象の作品だけど、私は「サラバ!」を読んだ時に感じた、ジェットコースターに乗った時のような疾走感は感じなかった。あの姉のような強烈キャラの登場人物もいなかったし。あれを読んでいなければ、素直に面白かったと言えたと思う。

◆サッカーボーイズ 再会のグラウンド (はらだみずき)
良い。こういう話、好きです。寄せ集めがチームになっていく様が良い。そして峰岸と小暮、大人のコーチたちも結局サッカー小僧じゃないですか。

続編も読んでみたい。

◆鈍感力 (渡辺淳一)
流行語大賞にもノミネートされていたくらいだから、当時としては画期的な発想の本だったのでしょうね。

私は雑菌に強いです。

◆カエルの楽園(百田尚樹)
なんとまあ、露骨な寓話!
朝日新聞や社民党、在日米軍や自衛隊、シールズや著者の百田さんっぽいカエルも出てくる。
客観的に判断すれば、今の日本の平和に貢献しているのは、日本国憲法よりも日米安保条約と在日米軍だ。エンエンやウシガエルの他に、日本の近くにはミサイルを打つ将軍様の国もあるし。大変だよね、日本。

◆人口と日本経済 (吉川洋)
経済成長と長寿、戦後日本のたどってきた道が良いものであったことが確認できた。これも政治のおかげ、素直に感謝です。
そして、少子高齢化していくこれからの日本、私もいい歳したおやじなので、考えさせられます。
人口が減ってもイノベーションで持続的成長が可能というのは分かる。日本の労働生産性がまだまだ改善の余地があることも実感している。でも、給与所得者が減って需要が頭打ちになり、イノベーションの矛先は海外に向くのでは。

自分のためだけではなく、国のためにも労働を継続して収入を得、消費して需要を喚起する。日本の高齢者、特に元給与所得者も、意識を変えることが必要なのでは。