「人口と日本経済」(吉川洋) | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

人口と日本経済

 

人口減少が進み、働き手が減っていく日本。もはや衰退は不可避ではないか。そんな思い込みに対し、長く人口問題と格闘してきた経済学は「否」を突きつける。
経済成長の鍵を握るのはイノベーションであり、世界有数の長寿国である日本にはそのためのチャンスが多々転がっているのだ。
日本の財政は破綻するのか、AIは人間の仕事を奪うのか、人間にとって経済とは――やわらかい語り口で、人口と経済の核心に迫る。

 

読み終わってから知ったのですが、中央公論社が主催している「新書大賞」というものがあり、今年の2位にランクインしたのがこの本だそうで。ちなみに1位は橘玲さんの「言ってはいけない」、これも既読でした。感想、書かなきゃ。

 

で、この本ですが、少子高齢化、人口減少という日本の大問題をとても分かりやすく説明してくれている良書でした。

 

まずは歴史認識。「江戸は当時世界一の都市だった」とか「戦前は日本は一等国だった」とか「三丁目の夕日の頃の日本の心は豊かだった」とか、色んな側面から過去を賛美する風潮もありますが、一人当たりGNPや平均寿命といった指標を通してみれば、戦後の日本が奇跡といってよいほど急速に良くなったことは紛れもない事実。これはほぼ一貫して戦後日本のかじ取りをした自民党政権と、それを支えた優秀な官僚たちの努力の賜物と思います。

 

そして将来の事。国の人口が減るだけでなく、長寿と少子化で働き手の割合が減って行く。もう日本という国の衰退は避けられないのではないか。この本は、そんな疑問に、真面目に、かつポジティブに、NOと答えてくれます。

 

経済成長は人口に寄らない。一人当たりの生産効率をイノベーションによって上げていけば、働き手の減少を上回って成長が可能である。それが著者の主張の骨子です。

確かに、厳しいけど可能であろう。でも、そのためには、戦後に日本人が起こした奇跡をもう一度やるくらいの覚悟はいるのでしょう。

 

イノベーションで供給側は引っ張れても、増大し続ける年金生活の高齢者に需要を期待できるでしょうか。農業や自営業では、70歳を過ぎても当たり前に働いている人がたくさんいます。今後の高齢者の多数を占める第二次・三次産業の給与所得者も、当たり前に70歳過ぎても働き、積極的に消費し、自ら需要・共有両サイドに貢献する、自分のためのみならず、この国のためにそれをやる、そんな覚悟が、今の日本人に必要と思います。