お願いだから私を壊して、帰れないところまで連れていって見捨てて、あなたにはそうする義務がある。
大学二年の春、母校の演劇部顧問で、思いを寄せていた葉山先生から電話がかかってきた。泉はときめきと同時に、卒業前のある出来事を思い出す。後輩たちの舞台に客演を頼まれた彼女は、先生への思いを再認識する。
そして彼の中にも、消せない炎がまぎれもなくあることを知った泉は―。
早熟の天才少女小説家、若き日の絶唱ともいえる恋愛文学。
(「BOOK」データベースより)
先生と元女生徒のヒリヒリするような恋愛モノ。
工藤泉のどうにも消せずに燻り続ける想いと、それを知りながら大人のくせに?大人ゆえに?煮えきらない葉山先生の態度。
ま、大人だ、先生だと言ったところで所詮は30代の男、誠実の皮を被りながらもずるかったり、青かったり、大したことないよな。
前半がどうにも冗長で、著者の世界に入り込むのに時間がかかったが、後半は葉山先生の態度に苛立ちながらも、泉の態度に面倒くさい女だなと思いながらも、感情移入して一気に読めた。テーマや文章力は申し分ないので、前半の200ページを100ページくらいにしたら、もっとテンポよく面白いものになったのにと、僭越ながら思ってしまった。
これを書いたとき、島本理生さんって、20代前半だったそうで、本作は06年の本屋大賞6位、05年の山本周五郎賞候補作、その他の作品も芥川賞等の候補になっていて、早熟の天才!
最近、あまり頻繁には名前をお聞きしないのが残念。
ところで、10年以上前に出版された本作を読んだのは、松本潤と有村架純で映画化されると聞いたから。
読んでみて、あまりに松潤のイメージとかけ離れた葉山先生像に、思わず「この映画、大丈夫か?」と思ってしまった。