円華という若い女性のボディーガードを依頼された元警官の武尾は、行動を共にするにつれ彼女には不思議な力が備わっていることを感じ始める。
同じ頃、遠く離れた2つの温泉地で硫化水素による死亡事故が起きていた。検証に赴いた大学教授・青江は、双方の現場で謎の娘・円華を目撃する。。。
最近東野圭吾作品をまとめ読みしており、ややいまさら感があるのだが、本作もやっと手に取ってみた。一昨年の発売時は、「彼女は計算して奇跡を起こす。作家デビュー30周年記念作品。東野圭吾が小説の常識をくつがえして挑んだ、空想科学ミステリ」という、かなり煽った帯がついていたので、かえってなんとなく敬遠してしまった。
「人魚の眠る家」「危険なビーナス」と本作、最近読んだ3作品いずれにも脳医学の話が出てくる。「使命と魂のリミット」「容疑者Xの献身」「祈りの幕が下りる時」、重厚な印象の東野作品がある一方で、こういう超常的能力ものは、ミステリーとしてはやや反則気味な気がしないでもない。
「ラプラスの悪魔」、昔、ブルーバックスで読んだ記憶がある。タイトルは忘れたが、不確定性原理や量子論がやさしく説明された本だった。世の中の森羅万象が予見できる、そんな状況を擬人化したものを、提唱した科学者の名を取ってこう呼んだものなのだが、最近はポケGOのレアポケモンのほうが有名になってしまった。それにしてもあの海竜みたいなのがなぜラプラスなんだろう。
まあ、それはさておき、小説のほうは、人為的にラプラスの悪魔になってしまった若い男女2名を中心にした空想科学ミステリーである。東野作品としては、面白さは中ぐらいであろうか。それでも、一気に最後まで読ませる筆力はさすがだ。
ところで、この本、青江教授が櫻井翔、円華が広瀬すず、謙人が福士蒼汰で映画化されるそうだ。
教授って、特に前半は存在感が薄く、円華に振り回される地味な役回りなのだが、翔くんが演じるとなればそうはいかないだろう。原作のニュアンスを大幅に変えた作品になるのではないだろうか。
多分劇場には足が向かないと思うけど。