「ソロモンの偽証Ⅲ 法廷(上)(下)」(宮部みゆき) | 「晴走雨読」 廣丸豪の読書日記

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廣丸豪(ひろまる・ごう)と言います。日々の読書生活や、気に入った本の感想などを気ままに綴ります。

ソロモンの偽証6

空想です―。弁護人・神原和彦は高らかに宣言する。大出俊次が柏木卓也を殺害した根拠は何もない、と。城東第三中学校は“問題児”というレッテルから空想を作り出し、彼をスケープゴートにしたのだ、と。

対する検事・藤野涼子は事件の目撃者にして告発状の差出人、三宅樹理を証人出廷させる。あのイヴの夜、屋上で何があったのか。白熱の裁判は、事件の核心に触れる。(上巻)

ひとつの嘘があった。柏木卓也の死の真相を知る者が、どうしても吐かなければならなかった嘘。最後の証人、その偽証が明らかになるとき、裁判の風景は根底から覆される―。

藤野涼子が辿りついた真実。三宅樹理の叫び。法廷が告げる真犯人。作家生活25年の集大成にして、現代ミステリーの最高峰、堂々の完結。(下巻)

(「BOOK」データベースより)

 

確かにページ数は多かったけど、途中から読むのに加速度がついて、あまり長いとは感じなかった。ミステリーとしての結末は、ここまでの話の中で伏線がたくさんちりばめられていたので、概ね想定の範囲内であった。でも、だからこそ、読み終わってみればこれは必要な長さだったと思える。

柏木卓也に関して、実の父と兄が全く違う印象を持ち、それを証言をしたから、彼の不可解な死が理解できる。三宅樹里のわがままな嘘も、彼女の性格や心の動きが十分に描写されているから、腹立たしさを感じながらも受け止めることができた。

中高生が読めば中高生なりに、自分のような年齢のおじさんが読んでも感動できる、名作である。

「二〇一〇年、春」と題されたエピローグで、教師となって母校に戻ってきた野田健一が誇らしげに語る「友達になりました」という台詞は、逃げずに正面からぶつかった者同士だから言えるもの、読後感もなんともすがすがしい。