(あらすじ)
大学の同窓会で七人の旧友が館に集まった。
“あそこなら完璧な密室をつくることができる…”伏見亮輔は客室で事故を装って後輩の新山を殺害、外部からは入室できないよう現場を閉ざした。
自殺説も浮上し、犯行は成功したかにみえた。しかし、碓氷優佳だけは疑問を抱く。開かない扉を前に、息詰まる頭脳戦が始まった…。
(感想)
犯人は最初から分かっている、いわゆる倒叙ミステリーです。犯人は分かっているのに、その動機がさっぱりわからない。どう見ても仲良しの、気の合った大学時代の仲間。卒業後はそれぞれに進路が分かれ、久しぶりの再会を皆楽しみにしている。それなのになぜ。。。
場所は成城の高級住宅街のお屋敷を改造したペンション(よく考えるとかなり奇抜な設定)、事故を装った伏見亮輔の密室殺人はかなり完璧に成功したかにみえた。一向に部屋から出てこない新山を、他のメンバーは疲労と睡眠導入剤が効いてつい寝過ごしていると思っている。
第一章:同窓会、第二章:談笑、物語は進んでいくが、ドアロックがかかった現場のドアは開かれることなく、中で死んでいる新山も発見されず、また伏見の殺人の動機も語られることなく、すべては密室の向こう側。
第三章:不審、当初は「つい寝入ってしまっている」と思っていた仲間も、呼んでも起きてこない新山。単なる寝過ごしではなく、何らかの事故が起きているのではないか、自殺しているのではないかと時間経過とともに不審に思い始める。ほぼ伏見の筋書き通りに進む中で、唯一の不確定要素が碓井優佳の存在。彼女だけが、なかなか部屋から現れない新山を、この事態を、最初から不審に思っていた。
第四章:対話は、伏見と優佳が伏見の部屋で対峙する。緻密で完璧と思われた偽装工作の祖語、頭脳と頭脳のぶつかり合いは優佳の圧勝、事態は一気に収拾に、と思いきや。。。
驚愕の殺人動機と優佳の伏見に対する気持ち、事件は解決したけど、果たして事態はどう収拾したのだろうか。
06年の「このミステリーがすごい」「本格ミステリ」2位作品。ちなみに1位は同じ倒叙ミステリーで直木賞受賞作にもなった東野圭吾さんの「容疑者Xの献身」。これさえなければ1位取れてたよね、と思える秀作でした。